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金魚警報(再)

140字を水で薄めるところ

「傷物語 鉄血篇」観てきたので感想

このブログのどこにも宮原作品のファンブログです!とは書いていないので別にいいんじゃね…?という脳内ジャッジに従い、ここに感想を投下する次第です。

ネタバレ注意。

傷物語 (講談社BOX)

傷物語 (講談社BOX)

 

 「傷物語 鉄血篇」を観てきました。映画化の告知があったのが2010年の夏だったので、5年半待ちましたね。いや、よくうん年ぶりに世に出た作品に触れた感想として○年待った、なんて慣用句にように言いますが、傷物語に関しては本当に、本当に待ってましたからね。あの一分少々の予告映像をまるで死んだ子の年齢を数えるかのように繰り返し繰り返し観てましたからね。そうしていつか俺たちの2012年がやってくるのだと、まよいマイマイの時の阿良々木さんのような、それはもうぐるぐるした目で。まぁその辺の話はおいておいて、傷物語本編ですよ。

冒頭、吸血鬼になった阿良々木さんが太陽に下でうわあああああなシーンですごいインパクト、つかみはばっちりです。ただ60分しかない時間の中で随分と長尺を割いて学習塾(テレビシリーズとデザインが違う)、町並み(相変わらずゴーストタウン)、カラス(貝木の時より多いぞ)などなど、傷物語の世界の陰鬱とした雰囲気が丹念に描写されるものだから、もっと見ていたいような、時間ないから早よ…!と先を急ぎたくなるような、その両方が入り混じった心境で眺めていました。今回の映画全編に言えることですが、カットの連続で飽きさせない工夫としていたテレビシリーズとは対照的に一つのシーンの長回しが多かったように思います。しかしあれですね、絵が、映像が、最初の「化物語」を思い出さずに入られない待望の尾石達也テイスト。原作のシリーズ自体が大好きというのはもちろんですが、それと同じぐらいアニメの化物語には強い思い入れがありまして、その多くがシリーズディレクターという肩書で演出を担当していた尾石さんの作り出す印象的な映像がもたらしたものでした。なもんで監督:尾石達也というだけでどう転んでも自分は楽しめる作品になることはまぁ間違いないのですが…。

羽川さんとの出会いのシーン。今回の感想を一言だけ述べるのならば何を差し置いても言わねばなるまい、「羽川さんかわいい!」。すごいですねこれ、今までのシリーズで色んな表情を見せてきた彼女ですが、傷物語の時点ですでにこれでもかというほどに溢れています。駄々漏れです。作画に気合が入り過ぎなおぱんつ様も劇場版の豊潤な予算で揺れまくるおっぱいも所詮はオプションに過ぎないのですね。

対する阿良々木さんも「友達を作ると人間強度が下がる」頃の阿良々木さんなもんで、つっこみが少しわんぱくなだけのダウナー主人公です。(ちなみのこの台詞、ドラマCDで言及され八九寺に爆笑されてたりする。のでわりと早い段階で黒歴史ネタと化していた)。人物同士の会話が死ぬほど描かれてきた物語シリーズですが、阿良々木さんと羽川さんのファーストコンタクトな会話は見ていて新鮮で緊張感のある場面で良いですね。

エロ本のくだりを経て(酷い落差だ)メインとなるキスショットとの邂逅シーン。もうこれ、ホラーですよね。原作だと地下道だったような記憶があるのですけど、駅の入り口から入って、階段を降りて、エスカレーターを降りて、駅のホームへ…というこの阿良々木さんが恐る恐る声のする方へ近寄っていくシーン、先に待ち受けているものが何なのか観ている人は知っていてもやはり阿良々木さんの感情に入り込んでしまいます。怖い場面ですがすごく上手く演出するなと思いました。キスショットのグロテスクな肢体と、滔々とした呼びかけから豹変する哀しみの表情、そして悲鳴。序盤の山場としてとてもショッキングなシーンに仕上がっていました。悲鳴に赤ちゃんの泣き声を被せるのも容赦無い演出だと思いました。これを観てしまうと傾物語の満身創痍なキスショット像がずいぶん優しい物に感じられてしまうってもんです。逃げ惑う阿良々木さんの恐怖に引きつった表情もお見事。というか阿良々木さんほとんど60分ずっとこんな表情してたのでは…ラッキースケベだけではさすがに釣り合わないレベルの不幸に見舞われてますね彼。ところで救急車を呼ぼうと震える手で取り出した携帯の画面に「くぁwせdrftgyふじこp」とあったのは慌てふためく様子を表したのでしょうが、さすがにこの場面においてはねーよ!としか言いようがありませんでした。

学習塾で目覚める阿良々木さんとキスショット幼女版(忍ちゃんと呼びます)。この忍ちゃんもまた恐ろしく可愛いんですよね。前髪パッツンと頻度の高いジト目で怪異のみならずいろんな属性の視聴者も殺しに来ます。物語ヒロインズの中でそれほど忍に関心はなかったのですけど、今回の忍ちゃん登場により考えなおさねばという気にもなります(ちょろい)。人間に戻れるのか、と問われ肯定する忍ちゃんの儚げな表情がとてもとても印象的でした。

そんなこんなで吸血鬼殺し登場。会話の脱線もなく物語のすじも非常にわかりやすいので、つい最近のアニメ終物語なんかを思い出すと、これが同じ物語シリーズなのか…という気分にもさせられます。そういう意味でも原点な作品傷物語。今回に限れば3人とも忍野に見せ場を与えるためだけの存在なので出番はここだけでしたが、台詞も阿良々木さんの混乱モードの演出によって加工された音声、しかも聞き取れないという、声優さんからすればちょっと悲しい扱いとなってしまいました。まぁそれはさておき、忍野の登場シーンですよ。あほみたいに動きまくっててめちゃくちゃかっこよく描かれています。阿良々木さん忍ちゃんそして忍野とみなさん高いところから飛び降りるのがお好きのようで、というか尾石さんだったか新房さんだったかの好みのシチュエーションだったような記憶もありますが、とにかく今回の60分の中でも飛び降りシーンは三者三葉に印象的でした。作戦会議のシーンの偽悪ぶる忍野も警戒する阿良々木さんも普通に会話に混ざってる忍ちゃんも今となっては貴重なシーンですことよ。さてここから作戦開始、というところでタイムリミットです。クビキリサイクルで言うなら玖渚友の「反撃開始だね」のシーンで終わるようなもので、生殺しもいいところです。もう少し話の進んだところで終わると思っていたのでちょっと驚きでした。

エンディング。こよみヴァンプだからオープニングは阿良々木さんが歌うんですよねwwとか昔は言われてましたが、蓋を開けてみれば主題歌はなく始まりも終わりも荘厳なBGMでした。まぁここで良い感じのバラードを持ってこられても全く締まらないのでこれで大正解だと思いますが。今更ながら神前暁さん復帰おめでとうございます。てっきり休養前に劇伴の制作を終えられていたのかと思いましたがどうやら復帰後のお仕事のようで、これからも良質な音楽でシリーズを支えていただきたい次第です。

予告。音声のみ、のあとにカウントダウンがあるもんだからてっきり映像も出るのかと思いきや、さにあらず、そのまま終幕となってしまいました。次回の熱血編は夏公開予定とのことで、さすがに何の映像も完成していないとは思えないのですが、なでこスネイクの黒駒事件がすっかり風化してしまった今、改めてシャフトと物語シリーズの格闘の歴史に思いを馳せずにいられないのでした。

はじめの方にも触れましたが、小気味よいカットの連続で小説そのものを表現しようと試みていたテレビシリーズの序盤(最近は思い切ってその辺のコンセプトは投げ捨てた印象)と比べると、今回の傷物語は怒涛の映像の力でねじ伏せてしまおうという気迫をひしひしと感じました。絵柄も尾石さんカラーの全面に出たものでこれまでのシリーズとは受ける印象が違うので、唯一無二の存在感を放つ作品になったのではないかと思います。劇場版という華々しい舞台、そこで長い長い物語のエピソード0をいかに演出するかという製作者の創意工夫、試行錯誤、腐心の結果。

こうして振り返ってみるととてつもなく濃い作品でした。あの強烈な印象を残した予告映像のテンションがそのまま60分続いたかのような。ストーリーはここから熱血篇、冷血篇と盛り上がっていくので、映像もそれに負けないようなもので対抗して欲しいです。他の方の感想はまだ存じ上げませんが、自分にとっては大変満足の行く作品でした。ただ、もともと綺麗な起承転結のある原作を無理やり3分割してるわけで、一本の映画としてみると正直少し寂しいものではあるので、年内にどどっと3部作全ての公開を終えてほしいですね。しかしあれだ、この焦らされ加減、かつてのつばさキャットを思い出さずにはいられないというもので懐かしい気持ちにもなります(良い思い出というわけではないが)。特典冊子を口実にこれからも何度か観ることになりそうなので、まだもう少し楽しもうと思います。

 

2015年1月11日追記:

他の方の感想を漁っていると思いのほか賛否真っ二つで面白いなと思いました。

やはり根本的な問題として三分割してしまったのが痛かったのではないでしょうか。2009年のアニメ開始から7年、77話に及ぶアニメシリーズはそのタイトルの多さも相まって、未見の方の途中参加へのハードルはかなり高いものと想像されます。そこへ行くと今回の傷物語、エピソード0ということで前知識無しでも楽しめる、言わば広大な物語シリーズへの入口として機能する映画なわけでして、それを思えば比較的端正に整った物語の起承転結をぶった切って起承だけで終わらせてしまうというのは、初めてシリーズに触れる人が消化不良を起こすのもむべなるかなという感じで。2016年に新規層をゲットする最初で最後のチャンスをふいにしてしまった感は否めません。(まぁ再放送とかはやってるのですが)

ただ、ファン向けムービーとしてこれ以上ないクオリティのものを提供してもらったなと、鑑賞から数日たった今しみじみと思います。というのも、正直ここ最近の憑物語や終物語などは長い年月をかけて確立された方法論を用いて、まぁ悪い言い方ですけど、淡々と原作を消化していってる印象をいつもどこかに感じていました。章ナンバーの挿入も、原作から一言一句台詞をそのまま再現するこだわりも、今となってはどこか義務的に感じてしまいます。最初の化物語の頃からは主要スタッフもだいぶ入れ替わっているのにもかかわらず、です。解釈も変わってくるだろうに。で、今回の傷物語は、冒頭に太陽に焼かれ炎上する阿良々木さんのシーンを持ってきたり、キスショットとの出会いの場所を街灯の下から地下鉄のホームに変更したり、テレビシリーズで描かれた建物や町並みのデザインを変更したり、そして何より阿良々木さんのモノローグを一切描写しないという大胆な手法を用いていたり…とにかく演出や構成の端々にに腐心した形跡がありました。作り手が原作と正面からぶつかり合い格闘した跡が伺えたことがとても嬉しかったのです。正しく「アニメ化」したのだなと感慨深くもなるのです。その結果が観た人の目にどう映ったのかはまぁ別問題なんですけど、少なくとも自分は3分割という点を除けば大変満足の行く作品でした。というかもうあの可愛さ極まる羽川さんを拝めただけで再度劇場に足を運ぶ価値は大いにあるってもんですよ…!結局これだよ。

Blu-ray化の際は三部作まとめてほしいところですがそういうわけにもいかんのでしょうな。今思うと2時間40分を一本にまとめ上げた涼宮ハルヒの消失はめちゃくちゃ恵まれてたんだなと…。

傷物語 涜葬版

傷物語 涜葬版

 

 だらだらと書きましたが次回からは普通の宮原作品ブログに戻ります(言っちゃったよ…!)