週刊少年誌4誌の電子版を比較してみる
昨年に「週刊少年サンデー」が電子化され、今年に入って「週刊少年チャンピオン」が毎週木曜の電子版配信を開始しました。これにより「週刊少年ジャンプ」「週刊少年マガジン」と合わせて4誌の電子版配信体制が整うことと相成ったわけですが、配信形態はもちろん、電子化に際しての収録内容も各誌で異なります。
多分に主観が入っていますが、雑にまとめるとこういう具合。
・ジャンプ
自社アプリでの配信という形態でいち早く電子版をリリースしたのがジャンプ。アプリ「少年ジャンプ+」での定期購読or単号購入というかたちで読むことができます。単号は紙版と同じ250円ですが、定期購読は月額900円なので紙版より少しお得です。当初は記事ページや巻末コメントなど未収録部分もありましたが、度重なるアップデートを経て現在では紙版とほぼほぼ同じ内容に。漫画・記事ともに紙版との差異がほとんど無いのが特徴で、電子版には不要なはずのハガキアンケートのプレゼントページまでご丁寧に掲載する徹底ぶりです。電子版独自の特典として、連載中の『ゆらぎ荘の幽奈さん』フルカラー版が、通常版とは別に巻末に収録されています。ちなみに以前は『食戟のソーマ』で、カラー化の恩恵を受けやすい(?)お色気作品が選ばれているようです。アンケートに関しても電子版独自のものが用意されており、質問項目や賞品などが紙版とは異なっています。最近ではキャラクター人気投票にアンケートフォームから参加できるようになった例もあり(2017年24号の『鬼滅の刃』)、非常に先進的です。
配信を月曜の0:00にしてほしいとか(現状5:00)、『ゆらぎ荘』再録を巻末コメントの後ろにしてほしいとか、トップページからワンクリックで最新号を開けるようにしてほしいとか細かい要望はありますが、基本的には満足しています。
・マガジン
リリース形態や収録内容がダントツにややこしいのがマガジン。アプリ「マガジンポケット」で単号購入・定期購読ができるほか、電子書籍ストアでも購入することができます。「マガポケ」での購読形態が非常に独特で、基本的に話数単位で購入する形式のため、ここでいう定期購読は、購入すれば最新号の掲載作品を読むことができる(≠最新号の電子版を読むことができる)というもの。特定の作品だけ追いたい・記事ページは別にいらないという要望に応える購読形態であると言えます。各作品の最新話は一ヶ月後に無料公開されるため、リアルタイムで追えなくても良いという方はそもそも購入する必要がありません。昨今の漫画の読まれ方を考えると、時差があるとは言え無料公開に踏み切るのはなかなか本気度が窺えて良いなと思います。
大きな欠点は『はじめの一歩』が未収録であるという点。後述する「チャンピオン」にも見られる例ですが、ベテランの作家さんほど紙へのこだわりが強いようです。
時代と状況がもっと変われば気持ちも変わる可能性もあるしこちらから電子化をお願いすることもあるかもしれません。しかしまだまだ出版社との話し合いと僕自身の勉強が足りません。電子も少年マガジンだということは理解しているし応援しています。皆様どうかよろしくお願いいたします。
— 森川ジョージ (@WANPOWANWAN) 2015年1月5日
また『七つの大罪』の扉ページも電子版には収録されていません。個人的にはこちらの措置の方が意味不明で、一読者として呪詛の一つも唱えたくなるわけですが…まぁネガティブな言及はやめておきましょう。電子版の扉ページは中央に大きくロゴが描かれているのみです。ちなみに『大罪』だけインクが黒色ではなく紫色になっています。以前はピンク色で死ぬほど読みにくかったのですが、さすがに改善されました。
紙版では袋とじの体裁で連載作品の特別編を掲載する場合があるのですが、こちらもまた電子版には収録されません。告知の文言すら載らないので、電子版しか読んでいない方は例えば先週号に『風夏』の袋とじ番外編が掲載されたなんてことは知り得ないというわけです。良いんだか悪いんだか。
来週はお楽しみの袋とじです^^
— 流石 景 (@k_sasuga) 2017年3月31日
たまに「このご時世に電子を冷遇するのか?」とのお声を見かけるのですが、違うのです。電子は色々規制が厳しく、袋とじの内容を付けられないのです。なので紙の雑誌を売りたいというよりは、電子でも紙でも雑誌を買うきっかけになればという試みなんですね。是非! pic.twitter.com/qAfbwHAt4l
漫画以外だと巻頭グラビアがほぼ未収録となっています。契約の問題なのか、グラビアページを飾るアイドルや女優のほとんどが電子版では拝むことができません。そのせいで電子版独自の表紙が生まれてしまっているのもマガジンの特徴と言えます。
(2017年40号紙版/電子版)
今年の号だと電子版に巻頭のグラビアページが掲載されているのは42冊中5冊でした。
前述の通り漫画しか読めない「マガポケ」では他の記事ページと同様にグラビアは一切収録されておらず、またアンケートも紙版のみとなっており、関連ページもやはり収録されていません。というか表紙すらありません。使い分けとしては、雑誌として一冊を読みたい・電子書籍アプリで管理したい方はストアでの購入、漫画だけ読めれば良いという方は「マガポケ」という感じでしょうか。その分「マガポケ」の定期購読は月額850円とお安くなっています。
・サンデー
4誌で最も遅く電子化されたのがサンデー。こちらはシンプルに電子書籍ストアでの単号販売のみとなっており、価格も紙と同じに設定されています。漫画作品はすべて収録されており、またグラビアに関してもジャニーズなど特殊な例を除いてすべて収録されています。マガジンでは収録されなかったグラビアアイドルがサンデーでは普通に載っていたりするので、出版社毎に契約が異なるとかそういう事情でしょうか。
(2017年32号)
現状はストアでの購入のみですが、アプリ「サンデーうぇぶり」で定期購読ができるようになる、というアナウンスがなされています。今冬を予定とのことで、価格面などでアドバンテージがあればこちらに乗り換えるのもありかもしれません。単純にウェブ漫画のプラットフォームとしてまだまだ未熟な「うぇぶり」なので、大規模な改修に期待しています。
・チャンピオン
こちらもサンデーと同様に電子書籍ストアでの配信という形態をとっています。2016年にリリースされましたが、配信が翌週の火曜日という週刊誌としては致命的な時差があり、まだまだ購読の選択肢としては厳しい状態でした。今年のはじめにようやく木曜日の配信に切り替わり、満を持して電子版4誌を発売日に読むことのできる環境が整いました。木曜配信の開始に伴い各電子書籍ストアで大規模なキャンペーンが行われ、ストアによっては最新号が10円で買えるというご乱心セールが数ヶ月続くということで話題になったのは記憶に新しいところです。サンデーもそうですが、かねてより書店・コンビニでの入手難易度が上がっていたチャンピオンの電子化はとても意義深いと言えましょう。
『ドカベン ドリームトーナメント編』が未収録となっているのがやはり電子版としては痛いところでしょうか。グラビアはサンデーと同じくそのまま収録されています。アンケートやプレゼントのページはほぼ未収録、号によっては紙面の一部分だけが切り取られているパターンも見られます。逆に電子版の特典として系列作品の読み切りや第一話が載ることもあり、新規読者獲得に熱心な様子が窺えます。
4誌を概観すると総じて漫画以外の部分、雑誌の「雑」部分が弱い印象を受けます。どこまで求められる要素なのかは分かりませんが、紙版が基準である以上可能な限り漸近して欲しいとも思います。マガポケみたいな在り方を見ているとそもそも雑誌とは…みたいな気分にもなってくるというもんですがまぁそれはそれで。
やはり一番の問題は電子版に収録されない作品の存在なわけですが、作者がNOと言ってしまえばそれ以上読者としては何も言うことができないわけで、そういった瑕疵も含めて秤にかけて読み方を選択するしかないという話です。4誌とも電子版で購読している身としては、載ってない漫画はすなわち存在していない漫画であるわけで、存在していない漫画に思うところは特にありません。
ということで少年誌の電子版が揃い踏んだ2017年、まだまだ一長一短はあるものの、これを機に漫画雑誌クラスタが増えてくれたら、それはとっても嬉しいなって。