『恋愛ラボ』表紙の「まんがタイムスペシャル」が50冊を越えたので振り返ろう
「まんがタイムスペシャル」2010年10月号から続く『恋愛ラボ』表紙号が50冊を越えたので*1勝手に振り返ります。完全に自分用メモです。
・2009年10月号、移籍連載開始
「まんがホーム」「コミックエール」での並行連載を経て、「タイスペ」での連載に一本化されたのがこの号です。この頃は数ヶ月に渡る休載や隔月連載など不定期な掲載が続いており、本格的な連載が始まるのは表紙担当が始まる一年後を待つこととなります。(このあたりの複雑な掲載チャートはいずれまとめたいと思います)
・2010年10月号:単独表紙開始号
現在まで続く表紙の最初の号となりました。この号の掲載分からちょうど単行本6巻に突入することとなります。そういう意味では6巻の表紙が突然真っ赤なデザインになったのも節目という意味でなかなか象徴的です。(とはいえ7巻からまた戻ってしまったので特に理由はなかったように思いますが…。リコの赤面が表紙に飛び火したに違いない。)研究編/実践編と独立していた連載が一本化されたことで、この号からしばらくは前半が生徒会メンバー中心の恋愛研究、後半がいりきみ塾における男子陣との交流を描くという構成となりました。
・リコ、マキのツーショット表紙が続く
やはり主役の二人ということで、これまで表紙にカットが掲載された時と同様、ツーショット表紙が続くこととなります。たまに背景にスズ、エノ、サヨの3人が描かれるという構図でした。
・2011年3月号、伝説の(?)バレンタイン表紙
「やるよ………………」というコピーとともに一部界隈で話題となりました。すさまじい破壊力。
・2011年6月号、初のマキ単独表紙
樹るう先生の新連載カットが幅をとるため(?)、単独で表紙を飾ることとなったマキ。スカートに摘まれた花の中に紫陽花が見えるのがささやかな季節感の演出でしょうか。
・2011年9月号増刊「宮原るりコレクション」刊行
まんがタイム増刊号「まんがタイムコレクション」として刊行されました。リコ、マキとともに表紙を飾るは麦田美苑@『みそララ』。「大ブレイク中!」という文言からも、『恋愛ラボ』『みそララ』の2大連載で着実に人気を獲得していった形跡が窺えます。連載分の再録+描きおろしで構成されたこの「るりコレ」、『ラボ』特別編は単行本に収録されたものの、むんこ先生による宮原先生訪問エッセイや「おはなしあやちゃん」は本書でしか読むことができません(「おはなしあやちゃん」は厳密には「まんがホーム」連載分の再録ですが、未単行本化)。ゆえに翌年発売の第二弾と合わせて地味にプレミアが付いていたりする一品となっています。
・2011年10月号、久々の巻頭カラーで全員集合表紙
表紙開始号からちょうど一年後、再び5人が並ぶ表紙となりました。個人的に歴代表紙の中でも特に気に入っているイラストです。
・2011年11月号~、単独表紙が増える
この頃からリコ、マキの単独表紙が目立つようになります。関連は薄そうですが、この少し前から表紙デザインを担当されている方が交代しています。
・2012年4月号、貴重なリコ、サヨツーショット表紙
日常の何気ない仕草に無自覚な色気を放つリコとラーメン店主のサヨ。さらに背景にマキ、スズ、エノが隠れているというコミカルなお遊びが光るちょっと異色な表紙です。また、このあたりからリコ、マキが交代で単独表紙を飾るというローテーションが意識的に組まれていることが分かります。たまに入るツーショット表紙を経るとローテーションがリセットされる点にも注意です。
・2012年9月号、『笑って!外村さん』とのコラボ表紙
この号では『外村さん』ドラマCD化記念としてツーショット表紙が実現、夏緒と夏記の残酷な乳格差が図らずも露呈した記念すべき表紙となりました。表紙担当以降、現在まで唯一の他作品とのコラボ表紙です。ちなみにアニメ『恋愛ラボ』DVD/Blu-ray第一巻特典冊子「私立藤崎女子中学校生徒会レポート」所収の「まんがタイムスペシャルラフ案集」において、宮原先生作画の外村さんを拝見することができます。
・2012年10月号、エノ、表紙正式進出
マキ、エノによる貴重なツーショット表紙が実現しました。宮原先生によれば当時発売中の増刊「るりコレ」との差別化を図る意図があったとのことですが、結果的にエノが主役と並列に描かれるという珍しい表紙となりました。内容的にもエノがUK王子に陥落する重要な回だったので、エノが主役の号であったと言えます。
・2012年10月号増刊、「るりコレ」再び
発売日としては上記の10月号より先なのですが、第二弾となる「るりコレ」が発刊されました。この号収録の特別編は単行本8巻に、「るり&むんこの交換日記」はファンブック8.5巻に収録されていますが、前号収録分に引き続き「おはなしあやちゃん」が再録されているのでやはり手元においておきたい一冊です。ちなみに「るりコレ」未収録分をまとめた小冊子がCOMIC ZINでの『恋愛ラボ』10巻購入特典として付属しました。→宮原るり先生『恋愛ラボ』10巻に8ページ小冊子&イラストカードをプレゼント
・2013年1月号、アニメ化決定告知表紙
TVアニメ化決定ということで、逆に珍しい制服リコ、マキ表紙となりました。他作品のカットもなく、アニメ化を全面に押し出した表紙として非常に印象的です。このイラストはアニメ放映時の芳文社のCMでも使われていました。
・2013年5月号&6月号、アニメ情報解禁に合わせた表紙
5月号のアニメスタッフ、6月号の声優の発表に合わせた表紙となっており、恒例の季節の装いとは趣が異なる表紙でした。
・2013年8月号、アニメ放送開始記念W表紙
表紙と裏表紙でそれぞれ原作とアニメによる同じ構図のイラストが掲載されました。表紙でのコラボは他誌でもよく見かけますが、裏表紙を使ったアニメとのコラボは珍しいですね。ディティールの違いを見つけるのも楽しいです。
・2013年8月号増刊「恋愛ラボ公式ガイドブック」刊行
アニメ放送直前ということで刊行されました。ガイドブックと銘打ってはいますが、内容は初期エピソードの再録+描きおろしという「るりコレ」に近い構成となっています。アニメ関連の記事やトリビュートイラストは本書でしか拝めないのでやはり捨てるに忍びない一冊。他作家によるトリビュートイラスト企画は本書の「応援メッセージイラスト」のほか、2013年9月号の「プチアンソロジー」、同10月号の「恋愛ラボ♡コラボ」、8.5巻のゲスト寄稿にも見られます。
・2014年5月号~、リコ、マキ単独表紙が続く
この号から現在発売中の最新号に至るまで、マキ→リコのローテーションが間断なく続いています。ところでこの表紙、最終回っぽくてちょっとドキッとしました…。
というわけで主な表紙を振り返ってみました。
これらの表紙を拝見することのできるものとして、2013年夏のコミックマーケット84で発売されたイラスト集『恋愛ラボイラストレーションズ』、上でも触れましたアニメ『恋愛ラボ』DVD/Blu-ray第一巻特典冊子「私立藤崎女子中学校生徒会レポート」所収の「まんがタイムスペシャルラフ案集」、そしてファンブックである8.5巻の3点が存在します。ただ、8.5巻はカレンダーで採用されたイラストの再録という体であるためごく一部しか掲載されておらず、「ラフ案集」はその名の通り完成されたイラストではありませんし、表紙イラスト集である『イラストレーションズ』ですら抜けが見られます。ぜひ正式なイラスト集としてまとめていただきたく申し上げたい所存です。
最後に表紙登場人物の一覧と、上記3点の掲載有無をまとめておきます。
まとめる程でもなかった気もしますが、
リコ、マキ:21回、リコ単独:14回、マキ単独:11、5人集合:2
という結果になります。5人集合表紙が初期の2回しかなかったというのはちょっと寂しいですね。モブ的な出演を合わせると7回となるので、「リコ、マキ」+「スズ、エノ、サヨ」という構図が多く見受けられることが分かります。これはアニメイラストにおいてより顕著な傾向なのですが、アニメの話はまたの機会に。
*1:増刊号を除き先々月号でちょうど50冊目
『恋愛ラボ』10巻・加筆修正と雑誌掲載時の比較
『恋愛ラボ』単行本巻末には「~の掲載作品を加筆修正の上、収録いたしました」という文言が付されていますが、実際に雑誌掲載時とはどの程度の違いが見られるのでしょうか。私(以外に)、気にな(っている人がいるのか図)り(かね)ます(が)!
というわけで今回は最新10巻掲載分を見ていこうと思います。画像比較の際は左が掲載誌「まんがタイムスペシャル」から、右が単行本からの引用です。
・・・結論から言いまして宮原先生、月刊連載を2本(時に3本)並行してこなしてたりと何気にかなりの速筆作家だと思うんですけど、その筆の速さは単行本修正にも大変良く表れておりました。
p11 3コマ目:背景の展示品修正
最も多く見受けられるのが、このような背景の描き込みの追加。このコマをはじめ、同様の修正は以降もいくつか見られます。
p15右2コマ目:背景にモブ男子追加
ヤンとナギのやり取りを追うコマなので、正直一読目では気づきませんでした。モブ男子は単行本と、彼らのエピソードが掲載された「まんがタイム」にしか登場しておらず、「タイスペ」の方には一度も出ていないんですよね。単行本読者へのささやかなサービスと言える粋な加筆です。
p15左1コマ目:アンケート用紙に影追加
p19扉絵:ダッキー影追加
p19 2コマ目:視線矢印に白い縁取り追加
p21左1コマ目:「スズ兄の会社~」テロップがコマ中央上部から右下に移動
雑誌の方はあまり『恋愛ラボ』では見ない文字の配置でした。
p22右4コマ目:描き忘れ?スズ眼鏡追加
眼鏡までブッ飛ぶこの衝撃…!的な表現ではなかったようで、単行本ではきっちり着用しています。 デフォルメ顔とはいえ、眼鏡差分スズが拝める貴重な1コマ。
p23右4コマ目&同左4コマ目:書き文字修正
力強く掴まれた様子が伝わる表現に。
p27~:縮尺変更?
この特別編は全体にわたってページの縮尺が上手くできていなかったようで、雑誌掲載時に見きれていた部分が単行本ではきっちり印刷されています。例えばp31下部の「はっぴ~ば~すで~」の描き文字は雑誌だと隠れていたりします。
p29 5コマ目:兄様の独白に吹き出し追加
p33:擬音「パッ」追加
p34 6コマ目:リコ、マキの口元修正
同時に前髪も微修正+手元の輪っかにトーンも入りました。
口が閉じ、手元の謎の線が消えました。汗も追加。このコマにはサヨとスズも描かれていますが、修正が見られるのはこの二人だけです。
p39左4コマ目:ヤンの台詞に改行
p46右3コマ目:生徒会モブ台詞表記変更
「珍し」と漢字表記になり、全体的に描き文字のボリュームが少し抑えられました。生徒会モブ子さんかわいい。
同左1コマ目:ヤンのメール描き文字→活字に
同左2コマ目:リコ、マキの瞳にハイライト追加、スズ目トーン→白抜き
スズ白目多い…。
p48右1コマ目:貼り忘れ?エノ制服トーン追加
同左2,4コマ目:ヤン、ナギトーン変更
呪いの禍々しさが増した気がします。このトーン、『河合荘』でより多用されている印象があるのですがどうなんでしょう。
p57右3,4コマ目、同左1,4コマ目:リコ、ナギにトーン追加
p60右4コマ目:ヤンの台詞微修正
単行本では「日常的に」という枕詞が付き、一層俗っぽさが過ぎる表現に。
p72左4コマ目:ナギ、ヤンの台詞変更
ナギのごまかし方と、それに対応するヤンのツッコミが変わりました。オチが異なる修正は珍しいです。
p75 3コマ目:写真の描き込み追加
この回は雑誌掲載時は全体的に画面が白く、その分トーンなどを施した修正が多く見受けられます。本編と並行しての特別編連載(+『河合荘』)、おつかれさまでした・・・!
p75 5コマ目:リコ母の瞳にハイライト追加
p78:トーン追加
人物背景問わず、それはもう全体的に。
p79 3,4コマ目:ナギ、リコに影トーン追加+増毛
トーンによる影の追加だけでなく、跳ねた髪の毛が微妙に増えています。お話の肝であるナギとリコがバトンを繋ぐ印象的なこのシーンは、雑誌掲載の段階で既に表情や動きが描き込まれていたため、他のコマの白さと対照的でとても際立っていました。
p80 1コマ目:アナウンスの描き文字が活字に
この辺りのシーンでもトーンが増し増し。
p87左2,3コマ目:吹き出しの透過処理がなくなる&影追加
画像は3コマ目。吹き出し内に汗の漫符も追加。台詞が強調され、画面が見やすくなりました。またリコに影が差し、全体的なコマの白さも解消されました。
p100左1コマ目: 時計の影追加
p102:描き下ろし
クッキー作りを終えて帰宅するリコとマキの一幕。マキの「私の作ったモノしか食べたくなくなる魔術のようなレシピ♡」の台詞はこの後の加筆部分で拾われることになります。
p104左4コマ目:ナギの背景の丸トーンにハイライト追加
リコの驚きと喜びの混じった反応を受けてのナギの表情。間違い探しレベルの修正ですが、伝わってくるナギの感情が大きく変わってくる気がします。
p106左3コマ目:ヤンの台詞に怒りの漫符追加
漫符が付くことで呆れの台詞がややコミカルな印象に。普段通りのやり取りだからこそ「久しぶりに話した気がする」というヤンの独白に繋がります。とはいえ、そんな感情をしみじみと噛みしめるヤンの様子が窺える漫符無しの方もそれはそれで。
p108左~p109右:コマの入れ替え&行間コマ加筆
この部分は非常に説明しにくいのですが、雑誌掲載時は一本の4コマで完結していたヤンの謝罪のくだりが、単行本では4コマ2本分に再構成されています。p108左3,4コマ目が雑誌ではそれぞれ1,2コマ目に据えられており、またp109右3,4コマ目が雑誌での3,4コマ目にあたります。前者は加筆修正はなくそのまま、後者は構図や台詞のニュアンスが若干異なっています。
このコマではマキの表情が正面から描かれることとなりました。かわいい。
このほかに特筆すべきはp109右1コマ目。マキの台詞(?)が雑誌掲載時の「・・・」から「――!」に変更されており、ヤンの不器用な謝罪をこの瞬間に察したことがわかります。相手のことを思っての行動が誤解に繋がり、お互いに距離を置く→逡巡を経てコミュニケーションを図ることですれ違いが解消に向かう、という一連の流れは他者との関わり方や人間関係を主題とした(と個人的に思っている)宮原るり作品の肝なので、マキの喉の小骨が一つ取れる重要な場面として、単行本化にあたり丁寧な描写がなされたのかなと思います。ヤンに対して、また読者に対して見せるマキのはにかんだ表情は、誤解が一つ解決に向かうクライマックスシーンをポジティブに演出する、大変素晴らしい加筆修正だと思いました。
p110左~p111:描き下ろし
雑誌掲載時は右側の4コマでエピソードが終了となっていましたが、新たにその後のやり取りとして4コマ3本が追加されました。「魔術はかかってないですよ!?」というマキの台詞は上述のp102加筆ページでのやり取りを受けてのもので、コミカルなロングパスが成立しています。また雑誌掲載時はp110右4コマ目にあったUK王子のメールの末文(「あっこのメールは~」)が同左2コマ目に移動しています。加筆ページにより次巻を待たずしてマキが骨抜きにされてしまいました。アニメで観たいぞ。
…以上が10巻における加筆修正部分でした。2013年9月号掲載分以外は全ての話数で何らかの変更点が見受けられ、単行本化に際し非常に多くの部分に手を加えられていたことが分かります。探せばさらに細かな違いが見つかるかもしれませんが、大きな変更点は全て拾えたのではないでしょうか。
まとめると、背景の書き込みや人物のトーン、ハイライトの追加といった修正が主ではあるが、人物に関しては表情などの作画修正はほとんど行われない(=雑誌掲載の段階で既に丁寧に描かれている)、重要な心理描写がなされる場面においては作画だけでなく構成や台詞にも手が加えられることもある、台詞の改行や描き文字/活字の変更、心理描写用トーン(?)の変更など画面のバランスを意識した修正も見受けられる…といったところでしょうか。そしてお分かりの通り、表情ややり取りに加筆が入るのはリコ、マキ、ナギ、ヤンの4人。モブ男子が言うところの「俺達と明らかに線数違う」人たちです。今巻のエピソードの中心となったのがこの4人だったから、といえばそうかもしれませんが、やはり主役の二人+関係の深い二人の間に発生する感情・心情の機微の表現するにあたり、より細やかな描写が求められた結果なのだと結論付けたい次第です。サヨなんて修正箇所0ですからね…!
ということで以上が『恋愛ラボ』における「加筆修正の上、収録」の正体でした。該当する「タイスペ」が手元に無いので9巻以前の差異は把握していないのですが、加筆修正の傾向として上で見たものと大きく外れてはいないと思われます。いつか『河合荘』も把握したいところですが、「アワーズ」は保存していないのでどうしたものか…。
- 作者: 芳文社
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2014/09/22
- メディア: 雑誌
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