金魚警報(再)

140字を水で薄めるところ

まんがホーム目次4コマ「おはなしあやちゃん」掲載データ

宮原るり先生の未単行本化作品を訪ねて三千里企画。

「おはなしあやちゃん」は「まんがホーム」2007年11月号から2014年6月号まで6年半にわたりひっそりと目次ページにて連載されていた4コマ漫画作品です。むんこ先生で言うところの「ホームの目次のアレ」。宮原先生と姪・あやちゃんによる日々のやりとりが面白おかしく描かれており、長年雑誌の巻末に色を添えていました。絶妙に切り取られた、子供特有の突拍子もない行動や言動が宮原先生による容赦のない突っ込みと合わせて笑いを誘います。2人の直近のやりとりがベースとなって描かれているため年数の経過とともに作中のあやちゃんも大きくなっていくので、姪の成長を描いた実録エッセイ漫画としての側面もあると言えます。

f:id:sail_kamihitoe:20150825215351j:plain:w170 f:id:sail_kamihitoe:20150825215337j:plain:w167 f:id:sail_kamihitoe:20150825215330j:plain:w166
1話             16話             69話

正式な連載作品ではなく、また毎月4コマ1本という性質上、単行本化されることはなく現在に至ります。ただ、のちに別の媒体に再録される例が見られるため、必ずしも掲載誌を当たらなければ読めないということもありません。以下に各話掲載号とタイトル、再録媒体と収録状況を記します。はてな記法最高。


掲載号 タイトル



11




12







08




10
1 07年11月号 ごほん違い     ? ?
2 07年12月号 小悪魔     ? ?
3 08年1月号 小悪魔再び     ? ?
4 08年2月号 実践     ? ?
5 08年3月号 その気持ちだけで     ? ?
6 08年4月号 流行とかその時の好みとかあるし       ? ?
7 08年4月号 どこのAV       ? ?
8 08年4月号 がんばれチビ乙女       ? ?
9 08年4月号 いやし勝ち     ? ?
10 08年5月号 赤じゃないの     ? ?
11 08年6月号 私一体何の店に     ? ?
12 08年7月号 幻の乙女タイム     ? ?
13 08年8月号 平成生まれだよね?     ? ?
14 08年9月号 どんな夫婦     ? ?
15 08年10月号 シビア       ?
16 08年11月号 想定外の攻撃      
17 08年12月号 子ども限定魔法       ?
18 09年1月号 かわいい       ?
19 09年2月号 ホントずるい      
20 09年3月号 名称フリーダム       ?
21 09年4月号 あや的ブーム       ?
22 09年5月号 珍種      
23 09年6月号 珍名      
24 09年7月号 ダメな大人       ?
25 09年8月号 不自然すぎ       ?
26 09年9月号 どこでそんな言葉を       ?
27 09年10月号 別腹       ?
28 09年11月号 かっこかわいい       ?
29 09年12月号 なにやらかしたんですか       ?
30 10年1月号 計算が違いますよ       ?
31 10年2月号 まぁまぁだけどスキだってさ       ?
32 10年3月号 芸達者       ?
33 10年4月号 略しすぎ       ?
34 10年5月号 かなりアダルティー       ?
35 10年6月号 『せ』だよ?       ?
36 10年7月号 エア特訓       ?
37 10年8月号 小さくても女      
38 10年9月号 流してもらえるかと       ?
39 10年10月号 素早さも必須       ?
40 10年11月号 私にも言え        
41 10年12月号 超高音波        
42 11年1月号 そこまで速じゃない        
43 11年2月号 その やわらかな脳みそわけて下さい        
44 11年3月号 哀愁 勝手に倍増        
45 11年4月号 私=158cm        
46 11年5月号 局 部 的        
47 11年6月号 簡潔明瞭        
48 11年7月号 ゆるぎない        
49 11年8月号 ワイルド系        
50 11年9月号 いい顔してた        
51 11年10月号 それ多分 柄        
52 11年11月号 なんだその選択肢        
53 11年12月号 断言された        
54 12年1月号 しょっぱい顔で断られた        
55 12年2月号 すんません「絶世の美女」と
間違えました
       
56 12年3月号 キャラぶれぶれ        
57 12年4月号 目指せ!炭酸マスター        
58 12年5月号 「全然ちがーう!」って来ると
思ってたのに大人な対応された
         
59 12年6月号 あや的必殺技        
60 12年7月号 しかも1フレーズで終了          
61 12年8月号 それはそれでこわいな          
62 12年9月号 乙女ですもの        
63 12年10月号 きりかえスイッチどこ        
64 12年11月号 わかってんのか??        
65 12年12月号 あや的こだわり          
66 13年1月号 どうぞよろしくおねがいします        
67 13年2月号 でもいろんな意味ではずかしい
のでやめて
         
68 13年3月号 子犬を与えてはいけない系女子        
69 13年4月号 なめこ?それも違う」          
70 13年5月号 愛情と欲望のあいだ        
71 13年6月号 「こわい」の基準        
72 13年7月号 センスも成長          
73 13年8月号 興味あるのかないのか          
74 13年9月号 時々大人 でも子ども          
75 13年10月号 真顔でガン見        
76 13年11月号 もっと深刻なバカ          
77 13年12月号 3泊4日の新居        
78 14年1月号 付き合い始めの頃にもしたことないよ          
79 14年2月号 まずはあぐらをやめるとこからだな          
80 14年3月号 大喜びするのに照れが入るお年頃        
81 14年4月号 バレンタインっていい行事ですね        
82 14年5月号 仲よしJCとか撮りたいんや!!          
83 14年6月号 そんなコメント、それがあやちゃん        

「おはなしあやちゃん」は全83話(「話」とカウントして良いのか微妙ですが)、各号につき4コマ一本が掲載される形式でした。2008年4月号のみ、連載中の『恋愛ラボ』と合わせて「2本立てスペシャル」と題され、3ページにわたって掲載されました。この号で初めて「おはなしあやちゃん。」というタイトルが登場。いつの間にかタイトルの句点が消えてしまい、現在では「おはなしあやちゃん」が正式な?タイトルとなっています。

再録媒体は表に記した5つが確認できました。
・「まんがタイム」2011年11月号増刊「宮原るりコレクション」
・「まんがタイム」2012年10月号増刊「宮原るりコレクション」
COMIC ZIN恋愛ラボ』10巻購入特典「『おはなしあやちゃん』未収録集」
・「まんがタイム」2008年11月号増刊「むんこコレクション」
・「まんがタイム」2010年12月号増刊「むんこコレクション」

ここで何度も名前を出している「るりコレ」に最も多く再録されています。11年版だけで全話数の半分以上が収録されており、また12年版でその続きから読むことができる仕様となっています。この2冊さえ押さえておけば当時の最新話までを追うことができたわけですな。

※2015年12月19日追記:「るりコレ」(2011年版)の収録範囲に誤りがありましたので訂正します。「2本立てスペシャル」と題された上記2008年4月号掲載の4コマですが、「いやし勝ち」を除く3本が未収録でした。理由は定かではありませんが、この3本はいつもの目次ページではなく誌面の中で特別に設けられたページに掲載されたものである点、一本目の「流行とかその時の好みとかあるし」は扉絵付きの5コマ漫画であり1ページを専有している点などが関係しているものと思われます。なので、表紙の「全話収録」の文字に偽りありという…。


「『おはなしあやちゃん』未収録集」は連載終了後に『恋愛ラボ』の単行本特典としてまとめられました。「未収録集」とあるように、「るりコレ」以降の話数から8ページ14話が収録されています。未収録話からの抜粋という体裁のため、半分ほどが未収録集未収録話となってしまいました。その数13話。…ちょうどうまい具合に8ページ冊子に収まる数ではあるので、どこかのタイミングで未収録集2を製作していただける可能性は0ではないかな、と。

さてここまではいいとして、下の2つ。
現物を入手できていないため未確認なのですが、08年と10年、少なくとも2回の「むんこコレクション」において再録されていたようです。

458 : 名無し決定投票開催@詳しくは名無し決めスレで[sage] 投稿日:2008/09/22(月) 19:41:12
むんコレ遅ればせながら購入
エール版ラボもよかったけど、あやちゃんの破壊力の前にかすんでしまった
これって9月号目次分まで収録なのかな?


513 : 名無し決定投票開催@詳しくは名無し決めスレで[sage] 投稿日:2008/09/25(木) 13:29:36
むんコレ買ってきた。
…想像以上の破壊力だ…エール版ラボもあやちゃんも…

あやちゃんのご本は破壊力最大級だが、
しりとりもかなりヤバすぎる。

http://www.logsoku.com/r/2ch.net/4koma/1217834402/

再録範囲は不明ですが、この「むんコレ」が発売された月の「ホーム」掲載分で15話目、前月分までの再録だとすると7~8ページに収まるので、当時の最新号直前まで収録されていた可能性は高いと思われます。言及されている「しりとり」回は2008年4月号「いやし勝ち」を指しているので、少なくとも9話目までは収録されたようです。

続いて10年12月号。こちらは公式サイトのページが残っていますね。
まんがタイムコレクション『むんこコレクション』│漫画の殿堂・芳文社

826 : □□□□(ネーム無し)[sage] 投稿日:2010/10/21(木) 02:40:01
むんコレのおはなしあやちゃんを読んで、新たな属性が扉を開けた気がする。


829 : 826[sage] 投稿日:2010/10/21(木) 05:45:15
あらいぐま萌えハァハァ


…ではなくて、めがね幼女萌えハァハァ


830 : □□□□(ネーム無し)[sage] 投稿日:2010/10/21(木) 07:47:28
「割とモノ洗ってる系」ってフレーズ好きだw

http://www.logsoku.com/r/2ch.net/4koma/1284215845/

「おはなしあやちゃん」は、目次ページの4コマ作品を総まとめにしたもので、
24列収録。
[番外編]まんがタイム むんこコレクション 2010年12月号増刊 - 4こま とらっきんぐ

初っ端からパンツ一丁&大人用Tシャツをマント代わりにしたロリペド大喜びお子様全開な姪っ子あやちゃんの艶姿には、宮原先生でなくても悶絶せずにいられません。
まんがタイムコレクション『むんこコレクション』 雑感あれこれ - さるたに秘密メモ@はてな

スズ化した髪を隠そうとしてる姿が可愛かったなw
立ち読み | ブックドラフト

ということで10年の「むんコレ」では24本収録、上記の情報からそのうち2008年11月号「想定外の攻撃」2009年2月号「ホントずるい」5月号「珍種」6月号「珍名」2010年8月号「小さくても女」の5本は確実に収録されているようです。…この程度の情報しか把握できなかったもので、表ではああいう中途半端な穴埋めになっています。
毎年何冊も発売される「むんこコレクション」に加え、「大乃元初奈コレクション」「師走冬子コレクション」にも初期『恋愛ラボ』や『みそララ』が再録されていた例があるので、もしかしたらこの他にも「あやちゃん」が収録されているコレクションが存在するかもしれません。それほど古い雑誌というわけでもないので、情報をお持ちの方おられましたらぜひお知らせください(恒例のオチ)

こうして見ると「ホーム」以上に再録されている雑誌の方が入手が難しいのでは…という結論に落ち着かざるを得ず、手っ取り早く拝む方法としては国会図書館でバックナンバーを読みあさるのが最短ルートかな、と。とはいえ所蔵されていない号も存在しているので、やはり単行本化を夢見るほかないのです。


全83話を1本につき半ページ(扉絵付きの6話目のみ1ページ)とすると単純計算で42ページなので、まんがタイムコミックスの半分にもなりません。ただ、「あやちゃん」を核として、読み切り「献愛週間」やかつて連載していたエッセイ漫画、連載作品の単行本未収録話や寄稿作品などを総動員すれば良い感じに一冊分になるかと思われるので、宮原るり拾遺集として出版社の壁を越えていただければ…という願望で締めさせていただきます。

C88御礼報告と編集後記

コミックマーケット88に参戦された方、おつかれさまでした。

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告知しておりました恋愛ラボ副読本ですが、なんということでしょう、

おかげさまで完売致しました。ありがとうございました。

記憶を記録にという意味も込めて、当日のレポートと編集後記をもって一連の活動を締めたいと思います。

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と、その前に、唐突にすみません、誤表記の訂正をさせてください。36ページの脚註1でタイスペ表紙リコと同じ構図の例として挙げた「『河合荘』キャンパスアートイラスト」は2014年のコミックマーケット86にて販売された「「僕らはみんな河合荘」セット ―律の夏、日本の夏―」描き下ろしポートレートイラスト」の間違いでした。自分の部屋に並べて置いていたせいか、混同してしまいました。

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・当日のレポート 

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 こんなブースを構えておりました。表紙イラストをあしらったパネルとキャプションで良い感じに装飾できたのではないかと思います。ありがとう会社プリンター。

誰も来なかったら寂しいからと、Twitterでそれはもううんざりするほど宣伝してたわけですが、それが功を奏したのか、たくさんの方にお越しいただきました。開場直後は艦これ・東方エリアの賑わいを遠くに感じつつまったりとしていましたが、30分もすると最初のお客さんが来訪、2冊もお買い上げいただきました。評論島においてはあのパネルが目を引くようで、足を止めて来られる方が多かったのが印象的です。表紙イラストを描いてくださったランジェリーマンさんには足を向けて寝られません。

一時間も経過すると流れてくる人も増え始めました。一直線にこちらに向かってきて即お買い上げ、という方もおられまして、最初から巡回先として選んでいただいてたのだと思うと、あの宣伝も無駄ではなかったのかなと思えます。そんな感じで時間は進み、12:30頃には完売となりました。…もともと大した部数を用意していなかったとはいえ、完売は全く想定していなかったもので、後からお買い求めに来られた方には本当に申し訳なかったです。大いなる反省点でした。

お越しくださいました全ての方へ、あらためまして、ありがとうございました。さっきからどうも敬語が過剰気味ですが、感謝の度合いの現れということでどうかひとつ。

 『河合荘』の間取りTシャツや「河」Tシャツをお召しになった方、マキのストラップを付けておられた方もいました。アニメは観てたよという方、タイスペのバレンタイン表紙で作品を知ったという方(!)、完売後ブースに来てお話してくださった方。作品に興味を持っている人たちに手にとっていただけたというのは、こっ恥ずかしくも素直に喜ばしいことでした。あと記憶に残っているのは、中を読んで気に入ったからと、あとから2冊目を買いに来られた方や、某ラボ推し書店の営業の方など…フォロワーの方にも買っていただいていたようで、TL上で知った時はとても嬉しかったです。趣味で制作した本を介して、大好きな作品について交流を図ることができたというのはとても得難い体験で、これもまた同人誌・同人誌即売会の数ある楽しみ方の一つなのだろうと強く感じました。振り返ると濃密な半日だったように思います。重ね重ね、ありがとうございました。

 

 

編集後記(※特に読む必要はないです)

とまぁこのように無事頒布を終えることができたわけですが、肝心の同人誌が100%満足の行く出来になったかといえば、残念ながらはいとは言い切れません。

2月頃から国会図書館に通うようになり、手元にない掲載誌のバックナンバーを読みあさりつつ、持ち込んだ単行本とにらめっこしながらひたすらメモとコピーを取る…という傍目には理解されないであろう活動に多くの土曜日を費やしました。以前に10巻の雑誌→単行本の変更点を見たのですが、全巻分を把握したくなったのと、単行本からでは窺い知れない企画ページやコメントなどを拝見しておきたかったのです。需要はともかく、これを紙面に一気にまとめたら面白いんじゃないかなと考え始めたのが4月頃で、これを中心に『恋愛ラボ』本を作ろうと緩やかに決意したのでした。当初は広く浅く「宮原るり作品副読本」として申し込んでいたのですが、調べていくうちに、これまで以上に『恋愛ラボ』という作品に魅了されてしまい、他作品へ向ける脳のキャパシティが底をついてしまったのでした。

あとは作品をひたすら読み返したり、ネットの海にもぐったりを繰り返していました。ぎりぎり先月末までやっていたように思います。結果、作品にまつわる多くの無駄知識を取り込むことができた一方で、適切な情報を取捨選択することができず、なかなか思うようなアウトプットができませんでした。かゆいところに手を伸ばすと言いつつ、かゆくもないところをかきむしる同人誌になってしまったなという心残りはどうしてもありました。が、とても楽しんで制作することができたので、自己満足という同人誌製作の第一義は満たせたと言えます。実製作において壁にぶつかることはそれはもう多々ありまして(主にWordで作ってました)、果たして本として形にすることができるのか…という心配がずっとありましたが、どうにかこうにか完成を見ることができました。当選が決まった時、駄目元でお願いした表紙イラストの依頼を請けていただけた時、完成したイラストを見た時、そして同人誌を手にした時。それぞれの瞬間の喜びはとても大きく、総じて楽しい時間であったと振り返ることが今ならできます。圧倒的感謝。

お会いした何人かの方に次回の予定を訊かれたのですが、正直未定です。冬コミは諸事情で不参加なので、あり得るとすれば一年後ということになりますが、今年ほど製作時間を取ることができるのかも不明なのでなんとも言えない状態です。作るとすれば、宮原先生の全お仕事目録とか、『となりのネネコさん』ファンブックとか、今回以上に誰得な本を作るのがいいかもしれません。まぁ同人誌はさておき、宮原作品に取り憑かれてしまった身としては、これからもこういうちまちまとした調べ事に興じるかと思いますし、ブログ記事にまとめることもあるかもしれません。その時はまたひとつ、よろしくお願いします。

自分は好きな作品を思いのままに語ったり、人に薦める行為が得意ではありません。感想やレビューを書こうにも、人の目を意識した文章を綴ろうとするとどうにも筆が進まないのです。しかしこうして阿呆みたいに一つの作品に血道を上げ、時間と労力を費やしている醜態を晒すことで、ほんの僅かでも自分の好きな作品に興味を向けてもらえるのであれば、それが目的ではないにせよ、とても嬉しいことです。そういう場としてこのブログや同人誌という媒体を扱っていけたらいいなと思っています。…何の話がわからなくなりましたが、まぁそんな感じで、はじめての同人活動を締めることとします。ありがとうございました。

恋愛ラボ 11 (まんがタイムコミックス)

恋愛ラボ 11 (まんがタイムコミックス)

 

次回の更新は「おはなしあやちゃん」掲載データか、同人誌で少しだけ触れた『恋愛ラボ』呼称問題(問題?)について書くよ…!

 

 

[お知らせ]C88恋愛ラボ副読本詳細

以前告知しました通り、夏コミにて『恋愛ラボ』副読本を頒布します。

 

日時:8月14日(金)(初日です)

配置:東5ホール “プ” 13-b(評論・情報)

タイトル:「かゆいところに手を伸ばす恋愛ラボ副読本 La bravo !」

判型:B5

ページ数:40ページ

価格:400円

 そしてそして表紙画像公開でございます。どーん。

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帰宅途中のリコマキが目印です。砂糖菓子のような髪も写っていますが裏表紙には果たして何が描かれているのでしょうか。その目でお確かめ下さい(まるわかり)

内容は、以前ブログでも書いた雑誌掲載時と単行本加筆修正の比較全巻分、宮原先生による各話掲載時のコメントと作品にまつわる証言の抜粋、現在ネットで閲覧可能なイラスト一覧、単行本収録話数と掲載誌対校表、描写に関する注釈、作品周辺の情報、掲載誌とタイスペ表紙の変遷、コラム「これまでの『恋愛ラボ』の話をしよう」など。

作品を振り返るというよりは、単行本片手に「ふーん」ってな感じに流し読んでいただけるような、『恋愛ラボ』を読んでいても特に引っかからないところを広く浅く掘り下げる内容です。結果的に混沌とした一冊となりましたが、それもまた同人誌の醍醐味ということで。とはいえ、身の丈に合わない素敵なイラストを恐れ多くも頂戴いたしましたので、その点におきましては強くおすすめします。表紙イラストを描いてくださいましたランジェリーマンさん(@Lanjeryman)には足を向けて寝られません。圧倒的感謝です。

ということで、夏コミ初日、艦これ・東方・刀剣乱舞でひとしきりお買い物を終えられました際に、ぜひお越しください。ビッグサイトで僕と握手。

恋愛ラボ 11 (まんがタイムコミックス)

恋愛ラボ 11 (まんがタイムコミックス)

ちょうど11巻発売日の翌週にあたりますゆえ、どうか単行本で高まった『恋愛ラボ』熱をそのままに。よろしくお願いいたします。

[お知らせ]夏コミで「かゆいところに手を伸ばす恋愛ラボ副読本(仮)」を頒布します

 

◎貴サークル「金魚警報」は、金曜日 東地区“プ”ブロック-13b に配置されました。

 

・・・ということで、今夏のコミックマーケット88にて「かゆいところに手を伸ばす恋愛ラボ副読本(仮)」を出します。手が届く、と言い切れないあたりの自信の無さは初参加ゆえ察していただきたい。本を作るのは初めてなので今から戦々恐々ではありますが、2月頃から粛々と進めてきた製作が無事日の目を見るよう精進致します。内容はこのブログで書いているような内容の延長のようなもので、作品をより深く楽しむための、かゆいところに手が届く孫の手のような(?)一冊を目指します。詳細はおいおいお伝えできれば。

 

当初は宮原作品全般を扱う内容を考えていましたが、まじめに取り組もうとすると一年は必要だなと思い至り、先生のキャリアを貫く代表作である『恋愛ラボ』に焦点を当てる方向へとシフトしました。

評論・情報ジャンルでの申し込みが正解だったのかは分かりませんが、一見誰が得するんだよ!みたいな同人誌がひしめく懐の広い島ですので、需要とかそういうのは置いておいて、少なくとも自己満足に浸ることのできる出来を追求したいなと…いやあんまり大きいことを言うのはやめておこう…。でもがんばるぞい。

ところで軽く頭を抱えたのが、『恋愛ラボ』11巻の発売日が夏コミ直前の8月7日というゆゆしき事態で、どう頑張っても入稿には間に合わないので、最新刊まで網羅できないという悲しみ。

恋愛ラボ 11 (まんがタイムコミックス)

恋愛ラボ 11 (まんがタイムコミックス)

 

 

『恋愛ラボ』と『河合荘』の時空が繋がった件について

エノサヨ表紙からの和服の5人があまりにも目にやさしい今月号の『恋愛ラボ』。

 本編はいよいよ文化祭に突入、準備期間が丹念に描写されてきただけに、今後の青春大爆発な展開を予感せずにいられません。また、自らの感情と向き合い変わり始めるリコやマキを見守ってきた一読者として、スズのサヨに対するつっこみ台詞にはこちらの気持ちを代弁をしているかのような安心感を覚えてしまいました。変わらないものの存在があってこそ変化に気づくことができるみたいな…まぁ何を言っているのかよく分かりませんが、今回の肝はそんな本編の片隅でひっそりと起こっていた宮原ワールドの地殻変動です。

 

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住子さん、何やってんすか。

僕らはみんな河合荘』でおなじみの住子さんが出版社の壁をひょいと越えてモブ出演。住子さんの友人「妙ちゃん」も確認できます。まさかあの2人が藤女の卒業生だったとは…という、ささやかなファンサービスだったわけですが、何気に『ラボ』と『河合荘』の2作品間のつながりが明確に示されたのはこれが初めてなわけですな。

舞台こそ「岐穂市」を中心とした周辺地域という点で共通しているのですが、『ラボ』と『みそララ』のように登場人物同士が互いの作品に登場したりするようなことはなく、直截的な接点はこれまでありませんでした。かろうじで指摘できるのは作中のゲームに登場する妖怪「ネコロさん」の存在が両作品をつなぐキーアイテムとして存在していたことぐらいですが、特に意味のない小ネタと言えます。

2作品のコラボ作品として、「かわいそうなラボ」(「ヤングキングアワーズ」13年10月号・「まんがタイムスペシャル」14年6月号掲載)が上げられますが、ゲスト出演という体なので作品世界は特に交わりませんでした。ちなみにこのコラボでは河合荘住人の中で唯一住子さんだけが登場していなかったので、これが伏線だったのかもしれません(考えすぎ)

というわけで特に声を大にして言うことでもなかったかもですが、藤女を卒業し河合荘の大家を務める住子さんの存在により、『恋愛ラボ』と『河合荘』、ひいては『みそララ』世界が一つであることが明確に示されることとなったわけです。今月号の「50周年の時の当時の生徒会メンバー」が住子さんたちであるかどうかは明言されていませんが、現在の2人のおおよその年齢を考えると合致しますし、であるならば作品間の時間軸も同じと見ることができます。ということでリコやマキたちが恋愛暴走している同じ頃に宇佐と律ちゃんの青春ラブコメが発生したりしなかったり、隣の市ではマース企画で穀物トリオと上司たちが今日も明日もタノシゴトに勤しんでいたりしているわけです。

長々と書いておいて結局それだけかいと思われそうな感じですが、こういう小ネタに気を張りながら何度も読み返しているラボライバーの端くれとしては、食いつかずにはいられないお話なのでした。

まぁ、純粋に楽しいですよね、こういうお遊び。

幻の宮原るり作品「ときめき欲しい症候群」をめぐる冒険

結構前からWikipediaの宮原先生の作品リストにひっそりと掲載されているこれ

ときめき欲しい症候群

 ・全部ホンネの笑える話(秋田書店

私、気になります!

情報がこれだけなもんで、いつの作品なのか、4コマなのか否か、「全部ホンネの笑える話」が雑誌名なのか、いまから拝読できる可能性はあるのか…などなど疑問符が飛び交って仕方がない。で、ヘッポコロジーや宮原先生のTwitterを辿ってみても情報は見当たらず。そこでいっちょ本腰入れて調べてみるかとネットの海に潜ってみた次第です。まだ見ぬ宮原作品を求めて。

 というわけでまず「全部ホンネの笑える話」を調べてみると、おお、ヒットした。どうやら2006~2009年頃に隔月で刊行されていたエッセイ漫画誌のようです。どちらかと言えば最近の雑誌ではありますが、エッセイ漫画誌という話題に登りにくいジャンルに加え、今は亡き雑誌であるという点が大きく、なかなか情報が今に蓄積されてこなかったものと思われます。Amazonでいくつかヒットするものの少数+情報が不完全なため、ここから辿るのは難しそうです。表紙に宮原るりの文字を見つけることができれば早かったのですが。

なら手っ取り早くタイトルと思しき「ときめき欲しい症候群」で調べてみる。案の定恋愛相談の記事が沢山引っかかって辟易としてしまいましたが(藤女生徒会に投書して下さい)、一つだけ感想を書いておられる方の記事が見つかりました。

「全部ホンネの笑える話」2007年10月号(秋田書店)(1) - 日記といふもの

 ということで2007年10月号に掲載された作品がこの「ときめき欲しい症候群」だと判明しました。で、もう少し情報はないかとブログ内を回ってみると、どうも他の号にも宮原先生の作品が掲載されている模様。「ときめき欲しい症候群」とは読みきりタイトルではなかったのか?まさかの連載作品だったのか?

ここに情報がなければもうお手上げだと藁にもすがる思いで向かった先は2ちゃんねる宮原るりスレッド。現在まで続くファンスレッド、その最初のスレが建てられたのが2007年3月なので、リアルタイムの情報にめぐり逢えるかもしれない。…ここからはもうひたすら目を皿にして文字列と向き合う時間です。当然ながらそこは作品について語り合う同好の集い、連載が始まって間もない『みそララ』や『恋愛ラボ』について様々な感想が飛び交う素敵空間なのです。気がつけば単行本を片手に読み耽ってしまい、結果的にこの作業に半日近くを費やすこととなりました。いいんだ、楽しいから…。

で、5スレほど概観した結果、上述のブログのような掲載情報が確認できた程度でその全容を把握するには至りませんでした。しかし手がかりは見つかったのです。

305 : 名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/22(土) 10:17:23

http://www.akitashoten.co.jp/CGI/autoup/listput.cgi?key=list&bunrui=040

これに載ってる漫画は十中八九単行本化されないだろうから雑誌おさえとけ

http://www.logsoku.com/r/2ch.net/4koma/1174794538/305

雑誌の公式サイトと思しきリンクがありました。案の定リンク切れなわけですが、ものは試しとWEB BACK MACHINEにかけてみる。カタカタッターン。

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はい出ました。素晴らしい。このバックナンバーのリンクから各号のページヘと辿って行くことができました。そしてありがたいことにきちんと掲載作品データが記載されているんですね。

ということで長い前振りではありましたが、宮原先生による謎のエッセイ漫画の所在は以下のように確認することができました。ご査収ください。

 

「全部ホンネの笑える話」

・2006年5月16日発売 Vol.4「本当にあった大失敗ハプニング!!」掲載「ヘッポコ結婚式!!」

・2006年7月18日発売 Vol.5「本当にあった赤っ恥体験!!」掲載「ヘッポコ結婚式!!」

・2006年9月16日発売 Vol.6「本当にあった赤っ恥体験!!」掲載「ヘッポコクラッシュ!!」

・2006年11月16日発売 Vol.7「本当にあったまる珍ハプニング!!」掲載「全部ホントの夫婦の話〜寝言編〜」

・2007年3月16日発売 07年4月号掲載「漫画家リレーエッセイ地元バトン♪〜岐阜県編〜」

・2007年5月16日発売 07年6月号掲載「トキメキ欲しい症候群」

・2007年7月17日発売 07年8月号掲載「怖いかもしれない話」

・2007年9月18日発売 07年10月号「本当にあった失恋体験! 」掲載「ときめき欲しい症候群」

・2007年11月16日発売 07年12月号「本当にあった恋愛バトル!!」掲載「ときめき欲しい症候群」

 

というわけで「ときめき欲しい症候群」とは単発の読みきり作品ではなく、定期的に掲載されていた一連のエッセイ漫画作品群のうちの一つであることが分かりました。この期間中に刊行された2007年2月号には掲載されていないようです。「本当にあった大失敗ハプニング!!」などはサイトからそのまま引用しましたが、おそらく各号の企画名だと思われます。

特筆すべきは、最初に掲載されたVol.4の発売日が「まんがタイム」の『みそララ』連載開始号の発売日(同年5月7日)の9日後という点。この頃の宮原先生の作品の動きを見てみると、2006年3月30日発売の「ウンポコ」Vol.5にて『となりのネネコさん』の連載が開始されており*1、これが先生の商業誌初掲載となります。その一ヶ月後に『みそララ』、そして一連のエッセイ漫画の連載が始まるわけです。このエッセイ漫画を連載作品と言っていいのか微妙なところですが、ウェブ上で人気を博した作品の商業誌進出、四コマ誌での新連載、そして自身の経験を綴ったエッセイをほぼ同時期に(しかもそれぞれ異なる出版社で)連載を始めるという、新人漫画家のデビューとしては異例の仕事量ではないでしょうか。『恋愛ラボ』『河合荘』と少しづつお仕事を増やしていった印象が強かった宮原先生、実はデビュー時から持ち前の速筆ぶりを発揮しておられたというわけです。翌年には『ラボ』もスタートしているので、一時期は連載4本を抱えておられたということになり、やはり驚かざるを得ません。当時のヘッポコロジーの更新頻度を思えばさらに…。

 最後に、このエッセイ漫画を今から読むことはできるのかということですが、国会図書館に一冊だけ所蔵が確認できました。「全部ホンネの笑える話 本当にあった赤っ恥体験」とあるので、Vol.5もしくはVol.6のことだと思われますが、んん、よく見たら出版年が2009年4月となっており…???奇数月発売の雑誌なのでそもそも4月発売号は存在しないはずで、3月発売の4月号にしたところで掲載データに宮原先生のお名前は見当たりません。書名からやはりVol.5かVol.6を指していると思うのですが、判を変えて再販されたとかでしょうか。最後の最後で謎が深まってしまいましたが、近日中に閲覧に向かいたいと思います。誰かWikipediaを書き換えようぜ!で締めようと思ってたのですが、もう少し精査が必要のようです。

 

とはいえ、読み切り作品や寄稿イラストなどを含めた全宮原作品リストを現在ひっそりと作成中なので、今回のささやかな調査も役に立ちそうです。さぁ次は「おはなしあやちゃん。」再録データ一覧表だ…(白目

 

*1:厳密にはa+r名義なので宮原るり名義のデビュー作品は『みそララ』となる

『僕らはみんな河合荘』6巻・雑誌掲載時と加筆修正の比較[後編]

ずいぶんと空いてしまいましたが、前回の続きです。引き続き細かな線の修正には言及せず、主な加筆修正箇所について見て行きたいと思います。

 『僕らはみんな河合荘』6巻・雑誌掲載時と加筆修正の比較[前編] - 金魚警報(再)

 第5話(「アワーズ」2014年8月号掲載)

p87 4コマ目:律の目にハイライト追加

p92 4コマ目:文字「妖怪ネコロ」追加

今巻の奥付にも描かれているネコロさん。ネネコさんの魂が宿っているに違いない。『恋愛ラボ』ではリコの鞄に付いているキーホルダーとして登場しており、9巻巻頭の人物紹介でも触れられています。今回の登場により宮原作品を横断する数少ないキーアイテムとなりました。背中(?)にも目が付いている事が判明。

p95 2コマ目:宇佐(似の新人)ネクタイにトーン追加

p102 7コマ目:律の全身黒塗りに

p103 5コマ目:広瀬の表情追加

名前が登場するのはもう少し後のことなので、この段階ではまだ律ちゃんを取り巻くクラスメイトの一人としてもモブとしても中途半端な立ち位置です。

p104 1コマ目:律のメールが描き文字→活字化

p107 3コマ目:擬音「ばっ」線の囲いが追加

p107 6コマ目:律の足音の擬音「タッ」追加

急いで来たんだなぁと思うと阿呆らしくも切ないシーン。

p108 2コマ目:前村のスカートにトーン、宇佐の靴に黒塗り部分追加

p110 2コマ目:擬音「ぷ」文字と枠の白黒反転

 

第6話(「アワーズ」2014年9月号掲載)

p113 2コマ目:住子台詞変更「優しいの?」→「その『優しい』は新しいわねー」

p115 2コマ目:住子台詞変更「優しいの?」→「新しいわー」

麻弓さんのボケへの応対が明らかに小慣れつつある住子さん。

p120 1コマ目:ツネコ台詞「今ファッション戻ってきとるからって」追加

バブリーな化粧は会社の先輩のせいだったのでした。

p120 4コマ目:通行人追加

長良川沿いから臨むこの背景は実在の風景から起こしたものと思われ、河合荘御一行が向かった温泉施設が長良川観光ホテル石金(がモデルの施設)だということが分かります。

p122 2コマ目:宇佐台詞変更「ハイ ソウデス」→「ウン ミナイネ」

p126 1コマ目:麻弓台詞変更「現実にはどこにもねーからな」→「現実にはどこにもねーから騙されないよう気をつけろよ!」

p129:描き下ろし

Uターン就職を巡る彩花とツネコのやり取りに描き下ろしページが追加され、彩花の過去の一端が詳らかになりました。このページの挿入に伴い前後のページにも変更が見られ、ここでも構成の妙が炸裂しています。p128左下のコマのツネコの台詞が「卒業したら帰ってくるって約束しとったやん」→「だって家出るとき」と変更され、描きおろし場面への導入となります。そしてp130の1コマ目も前ページでのやり取りを受けての台詞に変更されています。つまり 

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雑誌掲載時はこのように連続する流れだったものが(左→右)、単行本化にあたり間に1ページ追加され、その前後にあたるこの二コマにも修正が施されたということになります。描写自体を変更するのではなく台詞と表情に少し手を加えることで自然な会話の流れを切ること無くエピソードを展開していく様はやはり職人芸であると唸らざるを得ません。

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描きおろし場面では卒業後田舎に帰るという約束を「そんなの守るわけないじゃん」と改めて一蹴する彩花ですが、それを受けてなお「嘘だよ」と穏やかな眼差しを浮かべ言い切るツネコが印象的で、彩花に対する厚い信頼が窺える場面となりました。不意を打たれたような表情の彩花と対照的に映ります。たった1ページの挿入で彩花のバックボーンが語られると同時に、ささやかなやり取りからナベツネの関係性を見ることができるという面白さもあり、個人的にとても好きな加筆修正箇所です。

p132 4コマ目:ツネコ指にトーン追加・画面の文字が大きくなる

同7コマ目:左の人物に目が追加

 

第7話(「アワーズ」2014年10月号掲載)

 p161 1コマ目:林の鞄アクセサリーに描き込み追加

ハート型のキーホルダーにKの文字…和成のKに違いない。

同:林ぶち抜きがコマの隙間に進出(?)

f:id:sail_kamihitoe:20150301125134p:plain f:id:sail_kamihitoe:20150301125152p:plain間違い探し。

同 4コマ目:描き文字「ケッ」描き直し

同 7コマ目:椅子にトーン追加

p162 3コマ目:妖怪ネコロのイヤホンジャックの位置変更

p171の3コマ目に同じカットが貼られていますが、こちらは雑誌掲載時のままとなっています。

p175:色々変更

ぜひ単行本と見比べていただきたいと思います。雑誌掲載時の流れとしては、1コマ目麻弓台詞「USAくん♡ やるなこいつめぇぇエエ"エ"

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 「どこからでも切れる~」が削除され代わりに「最大出力で心と一緒に体もスパーク~」台詞が追加され、それに伴い周辺の台詞の配置が変更されたかたちです。その他影や効果の描き込みが追加されていますが、特に麻弓さんの表情の変化がおぞましいです。

f:id:sail_kamihitoe:20150301134149p:plain f:id:sail_kamihitoe:20150301134205p:plain魔弓さん…

p176 3コマ目:シロ服にトーン追加

貼り忘れかと思われます。ヒャッホゥ!

p177 4コマ目:椎名の口削除

p181 1コマ目:集中線トーンが吹き出し内から削除

同 5コマ目:麻弓台詞変更「わけわからんがクソ腹立つ」→「わけわからんがクソイラァ」&擬音「ドゴォ」派手に描き直し

p182,183:描き下ろし

シロさんの宇佐へのアドバイスが炸裂する(しない)描き下ろし2ページ。これまで見てきた例と同じく、ここでも描き下ろしページ前後の構成に変化が見られます。p181の5コマ目の宇佐ナレーション「俺の恋愛劇場は空回ってなんかない そりゃ劇的な展開はないけど/ちゃんと変わってるんだから」が少し文面を変えてp183の3コマ目へ移動しています。

p184:描き込み追加

雑誌掲載時は他のページに比べ全体的に描き込みが薄く、人物の目が白抜きとなっていたのが修正されました。おつかれさまです…!

p185 2コマ目:高橋の顔描き直し

f:id:sail_kamihitoe:20150301142409p:plain f:id:sail_kamihitoe:20150301142419p:plain

 高橋はそんな顔しない、みたいな意志を感じます。

 

というわけで以上が6巻における主な加筆修正箇所でした。傾向としては線や影、トーンの追加が特に多く、やはり人物の描写に重きが置かれていると言えます。また描き文字・活字のバランスや集中線の配置など、画面全体の色合いや見やすさといった点にも意識的に取り組んでおられるように感じました。

椎名・高橋の登場により揺れ動く宇佐と律ちゃんをはじめ、人物の感情の揺らぎを表すような重要な場面において特に繊細な加筆修正が施されています。描き下ろしページの挿入は3箇所4ページにわたり、これは前回見た『恋愛ラボ』よりも多いですね。描き下ろされる場面は総じて登場人物の内面を掘り下げる重要な役割を果たしており、何気ないやりとりの中で第三者の示唆に富んだ台詞が飛び出す点も見逃せません。シリアスパートにおけるシロさんの役割が固まりつつある気がします。整合性をとるため前後のページの台詞や構成が変更されるものの、コマ割りや人物の配置、吹き出しの位置などはそのまま流用されるパターンが多く見受けられ、再三言ってますがこれは結構凄いことをやってのけてるのではと感じます。

その他の修正箇所としてはやはりスタンガン片手に長広舌かます麻弓さんが印象的です。『河合荘』のネタ出しに四苦八苦しているというのはいつだったか宮原先生自身が仰っていたことですが、こういう小ネタに関しては引き出しが無数に存在しているのだなと感心することしきりです。この言語感覚がギャグシーンにおける魅力を生み出していることは言うまでもありません。

こうして一つ一つ見ていくと改めて加筆修正箇所の多さに驚きます。時間的な制約により連載では満足の行く出来に持って行くことが難しいからなのか、単行本に対するサービス精神が現れなのかは図りかねますが、なんとなく前者な気はします。これだけの加筆修正量は売りにしても良いぐらいだと思うのですが、元々頭に思い描いている描写に近づけることが目的なのだとすれば、さもありなんといったところでしょうか。

連載だけで満足しているという方にも、一読の価値は大いにあると声を大にして言いたい、と同時に、このように見比べる歪んだ楽しみ方ができるので単行本派の方もぜひ「アワーズ」本誌をお手にとってみてはいかがでしょう、と布教することで締めとさせていただきます。

ヤングキングアワーズ 2015年 04 月号 [雑誌]