金魚警報(再)

140字を水で薄めるところ

[お知らせ]夏コミで「かゆいところに手を伸ばす恋愛ラボ副読本(仮)」を頒布します

 

◎貴サークル「金魚警報」は、金曜日 東地区“プ”ブロック-13b に配置されました。

 

・・・ということで、今夏のコミックマーケット88にて「かゆいところに手を伸ばす恋愛ラボ副読本(仮)」を出します。手が届く、と言い切れないあたりの自信の無さは初参加ゆえ察していただきたい。本を作るのは初めてなので今から戦々恐々ではありますが、2月頃から粛々と進めてきた製作が無事日の目を見るよう精進致します。内容はこのブログで書いているような内容の延長のようなもので、作品をより深く楽しむための、かゆいところに手が届く孫の手のような(?)一冊を目指します。詳細はおいおいお伝えできれば。

 

当初は宮原作品全般を扱う内容を考えていましたが、まじめに取り組もうとすると一年は必要だなと思い至り、先生のキャリアを貫く代表作である『恋愛ラボ』に焦点を当てる方向へとシフトしました。

評論・情報ジャンルでの申し込みが正解だったのかは分かりませんが、一見誰が得するんだよ!みたいな同人誌がひしめく懐の広い島ですので、需要とかそういうのは置いておいて、少なくとも自己満足に浸ることのできる出来を追求したいなと…いやあんまり大きいことを言うのはやめておこう…。でもがんばるぞい。

ところで軽く頭を抱えたのが、『恋愛ラボ』11巻の発売日が夏コミ直前の8月7日というゆゆしき事態で、どう頑張っても入稿には間に合わないので、最新刊まで網羅できないという悲しみ。

恋愛ラボ 11 (まんがタイムコミックス)

恋愛ラボ 11 (まんがタイムコミックス)

 

 

『恋愛ラボ』と『河合荘』の時空が繋がった件について

エノサヨ表紙からの和服の5人があまりにも目にやさしい今月号の『恋愛ラボ』。

 本編はいよいよ文化祭に突入、準備期間が丹念に描写されてきただけに、今後の青春大爆発な展開を予感せずにいられません。また、自らの感情と向き合い変わり始めるリコやマキを見守ってきた一読者として、スズのサヨに対するつっこみ台詞にはこちらの気持ちを代弁をしているかのような安心感を覚えてしまいました。変わらないものの存在があってこそ変化に気づくことができるみたいな…まぁ何を言っているのかよく分かりませんが、今回の肝はそんな本編の片隅でひっそりと起こっていた宮原ワールドの地殻変動です。

 

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住子さん、何やってんすか。

僕らはみんな河合荘』でおなじみの住子さんが出版社の壁をひょいと越えてモブ出演。住子さんの友人「妙ちゃん」も確認できます。まさかあの2人が藤女の卒業生だったとは…という、ささやかなファンサービスだったわけですが、何気に『ラボ』と『河合荘』の2作品間のつながりが明確に示されたのはこれが初めてなわけですな。

舞台こそ「岐穂市」を中心とした周辺地域という点で共通しているのですが、『ラボ』と『みそララ』のように登場人物同士が互いの作品に登場したりするようなことはなく、直截的な接点はこれまでありませんでした。かろうじで指摘できるのは作中のゲームに登場する妖怪「ネコロさん」の存在が両作品をつなぐキーアイテムとして存在していたことぐらいですが、特に意味のない小ネタと言えます。

2作品のコラボ作品として、「かわいそうなラボ」(「ヤングキングアワーズ」13年10月号・「まんがタイムスペシャル」14年6月号掲載)が上げられますが、ゲスト出演という体なので作品世界は特に交わりませんでした。ちなみにこのコラボでは河合荘住人の中で唯一住子さんだけが登場していなかったので、これが伏線だったのかもしれません(考えすぎ)

というわけで特に声を大にして言うことでもなかったかもですが、藤女を卒業し河合荘の大家を務める住子さんの存在により、『恋愛ラボ』と『河合荘』、ひいては『みそララ』世界が一つであることが明確に示されることとなったわけです。今月号の「50周年の時の当時の生徒会メンバー」が住子さんたちであるかどうかは明言されていませんが、現在の2人のおおよその年齢を考えると合致しますし、であるならば作品間の時間軸も同じと見ることができます。ということでリコやマキたちが恋愛暴走している同じ頃に宇佐と律ちゃんの青春ラブコメが発生したりしなかったり、隣の市ではマース企画で穀物トリオと上司たちが今日も明日もタノシゴトに勤しんでいたりしているわけです。

長々と書いておいて結局それだけかいと思われそうな感じですが、こういう小ネタに気を張りながら何度も読み返しているラボライバーの端くれとしては、食いつかずにはいられないお話なのでした。

まぁ、純粋に楽しいですよね、こういうお遊び。

幻の宮原るり作品「ときめき欲しい症候群」をめぐる冒険

結構前からWikipediaの宮原先生の作品リストにひっそりと掲載されているこれ

ときめき欲しい症候群

 ・全部ホンネの笑える話(秋田書店

私、気になります!

情報がこれだけなもんで、いつの作品なのか、4コマなのか否か、「全部ホンネの笑える話」が雑誌名なのか、いまから拝読できる可能性はあるのか…などなど疑問符が飛び交って仕方がない。で、ヘッポコロジーや宮原先生のTwitterを辿ってみても情報は見当たらず。そこでいっちょ本腰入れて調べてみるかとネットの海に潜ってみた次第です。まだ見ぬ宮原作品を求めて。

 というわけでまず「全部ホンネの笑える話」を調べてみると、おお、ヒットした。どうやら2006~2009年頃に隔月で刊行されていたエッセイ漫画誌のようです。どちらかと言えば最近の雑誌ではありますが、エッセイ漫画誌という話題に登りにくいジャンルに加え、今は亡き雑誌であるという点が大きく、なかなか情報が今に蓄積されてこなかったものと思われます。Amazonでいくつかヒットするものの少数+情報が不完全なため、ここから辿るのは難しそうです。表紙に宮原るりの文字を見つけることができれば早かったのですが。

なら手っ取り早くタイトルと思しき「ときめき欲しい症候群」で調べてみる。案の定恋愛相談の記事が沢山引っかかって辟易としてしまいましたが(藤女生徒会に投書して下さい)、一つだけ感想を書いておられる方の記事が見つかりました。

「全部ホンネの笑える話」2007年10月号(秋田書店)(1) - 日記といふもの

 ということで2007年10月号に掲載された作品がこの「ときめき欲しい症候群」だと判明しました。で、もう少し情報はないかとブログ内を回ってみると、どうも他の号にも宮原先生の作品が掲載されている模様。「ときめき欲しい症候群」とは読みきりタイトルではなかったのか?まさかの連載作品だったのか?

ここに情報がなければもうお手上げだと藁にもすがる思いで向かった先は2ちゃんねる宮原るりスレッド。現在まで続くファンスレッド、その最初のスレが建てられたのが2007年3月なので、リアルタイムの情報にめぐり逢えるかもしれない。…ここからはもうひたすら目を皿にして文字列と向き合う時間です。当然ながらそこは作品について語り合う同好の集い、連載が始まって間もない『みそララ』や『恋愛ラボ』について様々な感想が飛び交う素敵空間なのです。気がつけば単行本を片手に読み耽ってしまい、結果的にこの作業に半日近くを費やすこととなりました。いいんだ、楽しいから…。

で、5スレほど概観した結果、上述のブログのような掲載情報が確認できた程度でその全容を把握するには至りませんでした。しかし手がかりは見つかったのです。

305 : 名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/09/22(土) 10:17:23

http://www.akitashoten.co.jp/CGI/autoup/listput.cgi?key=list&bunrui=040

これに載ってる漫画は十中八九単行本化されないだろうから雑誌おさえとけ

http://www.logsoku.com/r/2ch.net/4koma/1174794538/305

雑誌の公式サイトと思しきリンクがありました。案の定リンク切れなわけですが、ものは試しとWEB BACK MACHINEにかけてみる。カタカタッターン。

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はい出ました。素晴らしい。このバックナンバーのリンクから各号のページヘと辿って行くことができました。そしてありがたいことにきちんと掲載作品データが記載されているんですね。

ということで長い前振りではありましたが、宮原先生による謎のエッセイ漫画の所在は以下のように確認することができました。ご査収ください。

 

「全部ホンネの笑える話」

・2006年5月16日発売 Vol.4「本当にあった大失敗ハプニング!!」掲載「ヘッポコ結婚式!!」

・2006年7月18日発売 Vol.5「本当にあった赤っ恥体験!!」掲載「ヘッポコ結婚式!!」

・2006年9月16日発売 Vol.6「本当にあった赤っ恥体験!!」掲載「ヘッポコクラッシュ!!」

・2006年11月16日発売 Vol.7「本当にあったまる珍ハプニング!!」掲載「全部ホントの夫婦の話〜寝言編〜」

・2007年3月16日発売 07年4月号掲載「漫画家リレーエッセイ地元バトン♪〜岐阜県編〜」

・2007年5月16日発売 07年6月号掲載「トキメキ欲しい症候群」

・2007年7月17日発売 07年8月号掲載「怖いかもしれない話」

・2007年9月18日発売 07年10月号「本当にあった失恋体験! 」掲載「ときめき欲しい症候群」

・2007年11月16日発売 07年12月号「本当にあった恋愛バトル!!」掲載「ときめき欲しい症候群」

 

というわけで「ときめき欲しい症候群」とは単発の読みきり作品ではなく、定期的に掲載されていた一連のエッセイ漫画作品群のうちの一つであることが分かりました。この期間中に刊行された2007年2月号には掲載されていないようです。「本当にあった大失敗ハプニング!!」などはサイトからそのまま引用しましたが、おそらく各号の企画名だと思われます。

特筆すべきは、最初に掲載されたVol.4の発売日が「まんがタイム」の『みそララ』連載開始号の発売日(同年5月7日)の9日後という点。この頃の宮原先生の作品の動きを見てみると、2006年3月30日発売の「ウンポコ」Vol.5にて『となりのネネコさん』の連載が開始されており*1、これが先生の商業誌初掲載となります。その一ヶ月後に『みそララ』、そして一連のエッセイ漫画の連載が始まるわけです。このエッセイ漫画を連載作品と言っていいのか微妙なところですが、ウェブ上で人気を博した作品の商業誌進出、四コマ誌での新連載、そして自身の経験を綴ったエッセイをほぼ同時期に(しかもそれぞれ異なる出版社で)連載を始めるという、新人漫画家のデビューとしては異例の仕事量ではないでしょうか。『恋愛ラボ』『河合荘』と少しづつお仕事を増やしていった印象が強かった宮原先生、実はデビュー時から持ち前の速筆ぶりを発揮しておられたというわけです。翌年には『ラボ』もスタートしているので、一時期は連載4本を抱えておられたということになり、やはり驚かざるを得ません。当時のヘッポコロジーの更新頻度を思えばさらに…。

 最後に、このエッセイ漫画を今から読むことはできるのかということですが、国会図書館に一冊だけ所蔵が確認できました。「全部ホンネの笑える話 本当にあった赤っ恥体験」とあるので、Vol.5もしくはVol.6のことだと思われますが、んん、よく見たら出版年が2009年4月となっており…???奇数月発売の雑誌なのでそもそも4月発売号は存在しないはずで、3月発売の4月号にしたところで掲載データに宮原先生のお名前は見当たりません。書名からやはりVol.5かVol.6を指していると思うのですが、判を変えて再販されたとかでしょうか。最後の最後で謎が深まってしまいましたが、近日中に閲覧に向かいたいと思います。誰かWikipediaを書き換えようぜ!で締めようと思ってたのですが、もう少し精査が必要のようです。

 

とはいえ、読み切り作品や寄稿イラストなどを含めた全宮原作品リストを現在ひっそりと作成中なので、今回のささやかな調査も役に立ちそうです。さぁ次は「おはなしあやちゃん。」再録データ一覧表だ…(白目

 

*1:厳密にはa+r名義なので宮原るり名義のデビュー作品は『みそララ』となる

『僕らはみんな河合荘』6巻・雑誌掲載時と加筆修正の比較[後編]

ずいぶんと空いてしまいましたが、前回の続きです。引き続き細かな線の修正には言及せず、主な加筆修正箇所について見て行きたいと思います。

 『僕らはみんな河合荘』6巻・雑誌掲載時と加筆修正の比較[前編] - 金魚警報(再)

 第5話(「アワーズ」2014年8月号掲載)

p87 4コマ目:律の目にハイライト追加

p92 4コマ目:文字「妖怪ネコロ」追加

今巻の奥付にも描かれているネコロさん。ネネコさんの魂が宿っているに違いない。『恋愛ラボ』ではリコの鞄に付いているキーホルダーとして登場しており、9巻巻頭の人物紹介でも触れられています。今回の登場により宮原作品を横断する数少ないキーアイテムとなりました。背中(?)にも目が付いている事が判明。

p95 2コマ目:宇佐(似の新人)ネクタイにトーン追加

p102 7コマ目:律の全身黒塗りに

p103 5コマ目:広瀬の表情追加

名前が登場するのはもう少し後のことなので、この段階ではまだ律ちゃんを取り巻くクラスメイトの一人としてもモブとしても中途半端な立ち位置です。

p104 1コマ目:律のメールが描き文字→活字化

p107 3コマ目:擬音「ばっ」線の囲いが追加

p107 6コマ目:律の足音の擬音「タッ」追加

急いで来たんだなぁと思うと阿呆らしくも切ないシーン。

p108 2コマ目:前村のスカートにトーン、宇佐の靴に黒塗り部分追加

p110 2コマ目:擬音「ぷ」文字と枠の白黒反転

 

第6話(「アワーズ」2014年9月号掲載)

p113 2コマ目:住子台詞変更「優しいの?」→「その『優しい』は新しいわねー」

p115 2コマ目:住子台詞変更「優しいの?」→「新しいわー」

麻弓さんのボケへの応対が明らかに小慣れつつある住子さん。

p120 1コマ目:ツネコ台詞「今ファッション戻ってきとるからって」追加

バブリーな化粧は会社の先輩のせいだったのでした。

p120 4コマ目:通行人追加

長良川沿いから臨むこの背景は実在の風景から起こしたものと思われ、河合荘御一行が向かった温泉施設が長良川観光ホテル石金(がモデルの施設)だということが分かります。

p122 2コマ目:宇佐台詞変更「ハイ ソウデス」→「ウン ミナイネ」

p126 1コマ目:麻弓台詞変更「現実にはどこにもねーからな」→「現実にはどこにもねーから騙されないよう気をつけろよ!」

p129:描き下ろし

Uターン就職を巡る彩花とツネコのやり取りに描き下ろしページが追加され、彩花の過去の一端が詳らかになりました。このページの挿入に伴い前後のページにも変更が見られ、ここでも構成の妙が炸裂しています。p128左下のコマのツネコの台詞が「卒業したら帰ってくるって約束しとったやん」→「だって家出るとき」と変更され、描きおろし場面への導入となります。そしてp130の1コマ目も前ページでのやり取りを受けての台詞に変更されています。つまり 

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雑誌掲載時はこのように連続する流れだったものが(左→右)、単行本化にあたり間に1ページ追加され、その前後にあたるこの二コマにも修正が施されたということになります。描写自体を変更するのではなく台詞と表情に少し手を加えることで自然な会話の流れを切ること無くエピソードを展開していく様はやはり職人芸であると唸らざるを得ません。

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描きおろし場面では卒業後田舎に帰るという約束を「そんなの守るわけないじゃん」と改めて一蹴する彩花ですが、それを受けてなお「嘘だよ」と穏やかな眼差しを浮かべ言い切るツネコが印象的で、彩花に対する厚い信頼が窺える場面となりました。不意を打たれたような表情の彩花と対照的に映ります。たった1ページの挿入で彩花のバックボーンが語られると同時に、ささやかなやり取りからナベツネの関係性を見ることができるという面白さもあり、個人的にとても好きな加筆修正箇所です。

p132 4コマ目:ツネコ指にトーン追加・画面の文字が大きくなる

同7コマ目:左の人物に目が追加

 

第7話(「アワーズ」2014年10月号掲載)

 p161 1コマ目:林の鞄アクセサリーに描き込み追加

ハート型のキーホルダーにKの文字…和成のKに違いない。

同:林ぶち抜きがコマの隙間に進出(?)

f:id:sail_kamihitoe:20150301125134p:plain f:id:sail_kamihitoe:20150301125152p:plain間違い探し。

同 4コマ目:描き文字「ケッ」描き直し

同 7コマ目:椅子にトーン追加

p162 3コマ目:妖怪ネコロのイヤホンジャックの位置変更

p171の3コマ目に同じカットが貼られていますが、こちらは雑誌掲載時のままとなっています。

p175:色々変更

ぜひ単行本と見比べていただきたいと思います。雑誌掲載時の流れとしては、1コマ目麻弓台詞「USAくん♡ やるなこいつめぇぇエエ"エ"

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 「どこからでも切れる~」が削除され代わりに「最大出力で心と一緒に体もスパーク~」台詞が追加され、それに伴い周辺の台詞の配置が変更されたかたちです。その他影や効果の描き込みが追加されていますが、特に麻弓さんの表情の変化がおぞましいです。

f:id:sail_kamihitoe:20150301134149p:plain f:id:sail_kamihitoe:20150301134205p:plain魔弓さん…

p176 3コマ目:シロ服にトーン追加

貼り忘れかと思われます。ヒャッホゥ!

p177 4コマ目:椎名の口削除

p181 1コマ目:集中線トーンが吹き出し内から削除

同 5コマ目:麻弓台詞変更「わけわからんがクソ腹立つ」→「わけわからんがクソイラァ」&擬音「ドゴォ」派手に描き直し

p182,183:描き下ろし

シロさんの宇佐へのアドバイスが炸裂する(しない)描き下ろし2ページ。これまで見てきた例と同じく、ここでも描き下ろしページ前後の構成に変化が見られます。p181の5コマ目の宇佐ナレーション「俺の恋愛劇場は空回ってなんかない そりゃ劇的な展開はないけど/ちゃんと変わってるんだから」が少し文面を変えてp183の3コマ目へ移動しています。

p184:描き込み追加

雑誌掲載時は他のページに比べ全体的に描き込みが薄く、人物の目が白抜きとなっていたのが修正されました。おつかれさまです…!

p185 2コマ目:高橋の顔描き直し

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 高橋はそんな顔しない、みたいな意志を感じます。

 

というわけで以上が6巻における主な加筆修正箇所でした。傾向としては線や影、トーンの追加が特に多く、やはり人物の描写に重きが置かれていると言えます。また描き文字・活字のバランスや集中線の配置など、画面全体の色合いや見やすさといった点にも意識的に取り組んでおられるように感じました。

椎名・高橋の登場により揺れ動く宇佐と律ちゃんをはじめ、人物の感情の揺らぎを表すような重要な場面において特に繊細な加筆修正が施されています。描き下ろしページの挿入は3箇所4ページにわたり、これは前回見た『恋愛ラボ』よりも多いですね。描き下ろされる場面は総じて登場人物の内面を掘り下げる重要な役割を果たしており、何気ないやりとりの中で第三者の示唆に富んだ台詞が飛び出す点も見逃せません。シリアスパートにおけるシロさんの役割が固まりつつある気がします。整合性をとるため前後のページの台詞や構成が変更されるものの、コマ割りや人物の配置、吹き出しの位置などはそのまま流用されるパターンが多く見受けられ、再三言ってますがこれは結構凄いことをやってのけてるのではと感じます。

その他の修正箇所としてはやはりスタンガン片手に長広舌かます麻弓さんが印象的です。『河合荘』のネタ出しに四苦八苦しているというのはいつだったか宮原先生自身が仰っていたことですが、こういう小ネタに関しては引き出しが無数に存在しているのだなと感心することしきりです。この言語感覚がギャグシーンにおける魅力を生み出していることは言うまでもありません。

こうして一つ一つ見ていくと改めて加筆修正箇所の多さに驚きます。時間的な制約により連載では満足の行く出来に持って行くことが難しいからなのか、単行本に対するサービス精神が現れなのかは図りかねますが、なんとなく前者な気はします。これだけの加筆修正量は売りにしても良いぐらいだと思うのですが、元々頭に思い描いている描写に近づけることが目的なのだとすれば、さもありなんといったところでしょうか。

連載だけで満足しているという方にも、一読の価値は大いにあると声を大にして言いたい、と同時に、このように見比べる歪んだ楽しみ方ができるので単行本派の方もぜひ「アワーズ」本誌をお手にとってみてはいかがでしょう、と布教することで締めとさせていただきます。

ヤングキングアワーズ 2015年 04 月号 [雑誌]
 

 

 

『恋愛ラボ』表紙の「まんがタイムスペシャル」5年目にしてついにあの人が

 

エノ先輩単独表紙おめでとうございます!

まんがタイムスペシャル 2015年 3月号

…これを言いたいがための記事なので悪しからず。

というわけで、本日発売の「まんがタイムスペシャル」2015年3月号の表紙をもわもわゆるふわ砂糖菓子ガール榎本結子大先輩が飾っています。2010年10月号より続いている『恋愛ラボ』表紙ですが、リコ、マキ以外の登場人物が単独で表紙を飾るのは今回が初めてとなります。通算53冊目にして初の快挙。

『恋愛ラボ』表紙の「まんがタイムスペシャル」が50冊を越えたので振り返ろう - 金魚警報(再)

以前にも触れましたが、かつてエノとマキのツーショットが表紙を飾ったことがありました。

まんがタイムスペシャル 2012年 10月号 [雑誌]

まんがタイムスペシャル 2012年 10月号 [雑誌]

 今回はここからさらに飛躍を遂げたと言えます。とはいえ本編では特にエノが活躍するターンではないので、なぜこのタイミングでのエノ表紙なのか、というのはいずれ宮原先生自身が言及されるとは思いますが、推測するに、リコとマキでバレンタイン表紙をすでに4回飾っているから、というのが大きいと思います。

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左から順に2011年、2012年、2013年、2014年。こうしてみると風邪引いてるのかってぐらい半端ない赤面率なのですが、これこそがバレンタイン表紙の肝なので、毎回ポーズや仕草でバリエーションを出すというのも難しいと思われます。しかし「やるよ…」から続く恒例表紙を途絶えさせるわけにも行かず…よろしい、ならばエノだ。

…みたいな流れがあったかどうかは定かではありませんがそれはさておき、宮原先生曰く「似た名前が多いので目印にする意味もある」というタイム系列誌の表紙において、主人公ではない人物が単独で表紙を飾ったという事実は、リコやマキといったキャラクターだけでなく宮原先生の絵柄による存在感があってこそ実現できたものだと思いますし、作り手からすれば結構な英断なんじゃないかという気がします。それにGOサインを出せるぐらいにはこの4年で「タイスペ」の顔として読者内外に認知されたのだと言えましょう。

これからの「タイスペ」表紙では今後もこういった変化球が見られるのかもしれません。個人的にはリコとナギ、マキとヤンといった具合で男子が表紙に進出したら面白いんじゃないかと思うのですが、さすがに難しいか…「きらら」じゃないからなんとか。

まんがタイムスペシャル 2015年 3月号

まんがタイムスペシャル 2015年 3月号

 

 来年はスズに違いない。サヨは引き受けてくれない。

 

『僕らはみんな河合荘』6巻・雑誌掲載時と加筆修正の比較[前編]

以前『恋愛ラボ』10巻を引き合いに宮原先生の恐るべき加筆修正量を見たわけですが、4コマとは異なる魅せ方が要求される『河合荘』においてはどのような変更点が見られるのでしょうか。わたし気になります!

『恋愛ラボ』10巻・加筆修正と雑誌掲載時の比較 - 金魚警報(再)

ということで『僕らはみんな河合荘』単行本最新6巻と掲載誌「ヤングキングアワーズ」における内容の異同を見て行きたいと思います。話数及びページ数は単行本に準拠、画像比較の際は左が「アワーズ」、右が単行本となります。

恋愛ラボ』と異なり『河合荘』では加筆修正が施された旨が単行本巻末に記載されていないのですが、それが不思議なぐらい随所に手が加えられておりました。

 

・第1話(「アワーズ」2014年4月号掲載)

p5 3コマ目:宇佐のパーカーに模様追加

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雑誌掲載時はこの右頁のコマでしか描かれていなかった宇佐パーカーの模様?絵柄のプリントが、以降の全頁にわたり追加されました。周りのトーンが薄いので英語部分はちょっと解読できません。

p5 4コマ目:宇佐台詞の書体が白枠黒文字→白文字に

p6 5コマ目:宇佐台詞変更

「キスぐらいなら別にっっ」→「キスぐらいなら まぁ大した事じゃないけどっ」雑誌掲載時は強がっていたU.S.Aさんもこの通り。冒頭から宇佐修正3連発。

p7 2コマ目:律台詞が白枠黒文字→白文字に

p8 1コマ目:

このコマでは5つもの変更点が見られます。レッツシンギング。

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正解は店員台詞修正「502号室へどーぞー」→「302号室へどうぞー」、麻弓アホ毛追加 、住子帯模様追加、彩花台詞微修正「1人で鬼予約とかしんじらんなーい」→「一人で鬼予約とか信じらんなーい」、+上述の宇佐パーカー加筆の計5箇所でした。このコマは宮原先生による代表的な加筆修正の例が複数見られる象徴的な一コマとなっています。

号室が変更された意図は図りかねますが、以降背景に登場する部屋番号表示の札も3階フロアに統一されています。p14 4コマ目のみ背景の部屋番号表記が508、509となっており、宇佐と律ちゃんが飲み物を買いに来たのが5階フロアであることがわかります。そこまで行かないと自販機がないカラオケ店…!

この麻弓さんのように撥ねた髪の毛が追加されたりボリュームアップが施される魅惑の増毛体験的加筆はぶち抜きや大コマで多く見られ、『恋愛ラボ』でも同様の加筆が見受けられました。住子さんの帯は白から黒地に水玉へと変更され、以後該当する全てのコマで修正が施されています。こちらも併せて描き込み量の強化という真っ当な加筆修正と言えましょう。彩花の描き文字台詞の微修正は、『恋愛ラボ』での例を考えるとどちらかと言えば表記の変更よりも描き文字の字体やバランスの修正がメインなのではと思います。

p9 1コマ目:モニターの曲名/歌手表示が描き文字→活字に

同時に表記が雑誌掲載時の「斉藤和義」(「和」の字が吹出しで8割ほど隠れる)から「斉藤義和」に変更。また同コマの彩花の服にしわ追加。

p9 2コマ目:宇佐台詞に描き文字「しぶい」追加

p9 3コマ目:モニターの曲名/歌手表示が描き文字→活字に&擬音「パッ」描き直し

p10 1コマ目:彩花足音の表記変更「トン トン」→「トン❤ トン❤」

p10 2コマ目:彩花の頬にトーン追加

彩花先生のあざとさに磨きがかかる。

p10 4コマ目:宇佐の口が消える

p10 5コマ目:宇佐独白「レパートリー広いっすね 人格の」→台詞に変更、同時に口が一本線→半開きに、彩花服しわ追加、ソファーしわ削除

p10 6コマ目:モニターの曲名/歌手表示が描き文字→活字に、擬音「パッ」追加

p10 8コマ目:彩花目元にトーン追加

このページの修正、尋常じゃない量です。

p11 2コマ目:テーブルの影トーンのはみ出し修正、端末の移動線が増量

p11 3コマ目:麻弓台詞の書体が白枠黒文字→白文字に

p11 4コマ目:麻弓台詞「シロの分際で歌う気か・・・?」描き文字→活字に

p12 2コマ目:麻弓・チャーミーさんの震え線増量

p12 4コマ目:律服に影追加

p13 1コマ目:宇佐服に背景と同じトーンが追加

すごい一体感を感じる

p13 2コマ目:宇佐台詞中の「心」にふりがな「ハート」追加、シロ服にプリント「世間体」追加

p14 1コマ目:宇佐服にしわ・影追加

p14 5コマ目:律スカートにしわ追加

p14 6コマ目:部屋番号札に番号表記追加

p15 1コマ目:男女に影追加、男のピアスが2つに

p15 5コマ目:男女丸人間→髪や服の加筆

p16 1コマ目:男台詞が台詞の書体が白枠黒文字→白文字に

p16 2コマ目:擬態語「びくっ」黒→白抜きに、宇佐「!?」削除

またp16 1コマ目~4コマ目の登場人物の服・髪に線・トーンが追加されています。

p17 1~4コマ目:

ここまで見てきたように、人物への細かな書き込みの追加が多く見られるわけですが、中には間違い探しレベルのものもあり、この場面などは良い例だと思われます。

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1コマ目:宇佐髪加筆、首元影追加、パーカー模様追加、人差し指微修正、2コマ目:律瞳にハイライト追加、3コマ目:首元・襟の影追加、といった具合です。トーンやベタ、斜線による影の描き込みは『河合荘』において最も多く見られる加筆事項ではないでしょうか。人差し指は画像だと拡大してもらってもわかりづらいかもしれませんが、おそらくわずかにはみ出した線への対処だと思われます。

p17 4コマ目:「え!?」吹出しにトーン追加

p17 5コマ目:部屋番号追加

p17 6コマ目:部屋番号表記508 509(反転文字)→305 304に変更

p17 7コマ目:部屋番号追加

p17 8コマ目:律髪ボリュームアップ、白ツヤ追加

p18 3コマ目:麻弓胸元トーン貼り忘れ修正、しわ追加

p18 4コマ目:麻弓前髪黒→白抜きに

p19 1コマ目:麻弓髪、服に影追加

p19 2コマ目:宇佐・律の髪、服に影追加

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雑誌掲載時は律ちゃんの後ろ髪が消失していました。

p19 3コマ目:住子髪に線追加

 p19 4コマ目:台詞変更

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麻弓さんの住人に対する認識が少し柔らかくなりました。それでもクエスチョンが2つ付くあたりが麻弓さんクオリティ。

p19 5コマ目:宇佐・律の髪、服に影追加

p20 1コマ目:麻弓目元にトーン追加、律追加

雑誌掲載時は律ちゃんがいませんでした。

p20 4コマ目:男女にトーン追加

 

ここまでが第1話における主な加筆修正点でした。…1話ながら既に『恋愛ラボ』一巻分に迫る分量であるという驚愕の事実。全8話収録なのでこのような加筆修正があと7話分あると思っていただければ。宮原先生、この単行本作業だけでどれほどの時間を費やしておられるのかと、考えるだに恐ろしいです。ついでにこれらの把握に自分がどれだけの時間を費やしているのかについても冷ややかに察していただければと思います。いいんだ、楽しいから…。

そういう事情なもので第2話からは登場人物の髪や服、瞳などへの加筆については基本言及しないかたちで進めていきます。2、3コマに1コマぐらいの割合で何らかの手が加えられていると思ってください。

 

・第2話(「アワーズ」2014年5月号掲載)

p26 4コマ目:麻弓裸眼→眼鏡着用

貴重なカラーページで眼鏡差分麻弓さんが拝めます。次ページ1コマ目の眼鏡を掛ける動作をしている麻弓さんは単行本でもそのままになっており、修正前の名残をそこに見ることができます。

p30 4コマ目:酒瓶のラベルに文字「辛口 二千盛」追加、桜増量

余談ですが岐阜の地酒「三千盛」は実在します。

三千盛 純米 1800ml

p32 3コマ目:麻弓台詞中の「桜臀部」にふりがな追加

p32 4コマ目:桜増量

p34 4コマ目~p36 4コマ目:描きおろし

ここでは宇佐と律ちゃんの関係に対する麻弓さんの心境が掘り下げられています。「2人がダメになった方がいいの?」という住子さんの問いかけは、青春ぶち壊し隊長として暴虐の限りを尽くしてきた(?)麻弓さんに対して抱く読者の疑問と重なるようにも思いました。ページ単位の加筆ではなく、雑誌掲載時はp34の4,5,6コマ目がp36の5,6コマ目の位置に据えられており、コマとコマの間に麻弓さんと周囲のやり取りが挿入という特殊な形式をとっています。つまりはp34の3コマ目の次がp36の5コマ目になるという繋がり方になっているわけで、ちょっとした職人芸が展開されていると言えます。

p38 3コマ目:「焦りは禁物」の吹出しの変更

○型の吹出しから心中思惟を表す吹き出し(名前あるんだろうか)に変更されています。この変更により宇佐のモノローグであることが判明しましたが、雑誌掲載時は次のコマと合わせてシロさんのモノローグだと捉えることもできました。が、「焦りは禁物」に対する「意識改革が必要」となるのでやはり宇佐のモノローグでないと不自然…と今気づきました、はい。

p39 2コマ目:クラスの表札が描き文字→活字に

p39 3 コマ目:モブにトーン追加

p39 6コマ目:前村笑い声「あははっ」追加

p41 7コマ目:吹き出しの透過がなくなる

 

第3話(「アワーズ」2014年6月号掲載)

p53 1コマ目:彩花台詞に吹き出しが付く+活字に

p53 2コマ目:宇佐の台詞が宇佐の右下→左下に移動

p53 5コマ目:麻弓台詞「はぁー!?」黒→白抜きに

p54 1コマ目:麻弓台詞「万が一モテキなら潰す」の中に「すみやかに」追加

麻弓さんらしい悪即斬な形容動詞が。

p55 4コマ目:宇佐台詞が描き文字→活字に

p57 3,4コマ目:宇佐台詞の文字と吹き出しの白黒反転

p57 5コマ目:宇佐台詞白黒反転、宇佐、麻弓追加

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これはちょっと珍しい加筆かもしれません。

p60 2コマ目:シロさんの足追加

でも一本線なのだった。ヒャッホゥ!

p60 4コマ目:佐久間台詞→活字・ナレーションに

p60 4コマ目:麻弓表情変更

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酒ヤケ感は減りましたがより切実さが増しました。

p61 1コマ目:背景に擬音追加

後ろで佐久間のブレイブストーリーが。 

p61 6コマ目:父親デザイン変更

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第6話に1コマだけ登場する探偵っぽい紳士と似ているからでしょうか。

p63 4コマ目:描き文字「HAPPY♡BIRTH DAY」、プレゼント追加

p64 4コマ目:麻弓台詞変更「おー」→「おーいいぞ」、シロ「いやっふー」太字に

 

・第4話(「アワーズ」2014年7月号掲載)

p70 1コマ目:シロ台詞「ほばくー」追加

p71 2コマ目:宇佐台詞?白黒反転

p78 4コマ目:宇佐の輪郭修正

雑誌掲載時はよりデフォルメが強い表情でした。

p84 1,2コマ目:広瀬、律、前村の瞳にハイライト追加

放課後の青春模様に皆の目もきらっきら。

 

ということで1~4話までの加筆修正をざっと見てまいりました。第1話の異常な修正量を思えば第4話などはやや控えめに映ります。まとめは後半部分を概観してからにしますが、ひとまずここまでの加筆修正の特徴としては『恋愛ラボ』で見たものと大きく異なるものではないと言えるでしょう。分量の違いは4コマと対照的に断ち切りが多く、ページの隅々まで絵が描き込まれているからという単純な理由に起因していると思われます。

少し間が空くかもですが、後編へと続きます。

『恋愛ラボ』4誌に及ぶ掲載誌の変遷を追う

痒いところに手を届かせたい『恋愛ラボ』記事三部作のラストです。

今でこそ「まんがタイムスペシャル」の顔として定着した感のある『恋愛ラボ』ですが、連載開始から現在に至るまで、やや複雑な掲載誌の変遷を辿ってきました。

・「まんがホーム」2006年11月号掲載、同12月号~2010年9月号連載

・「コミックエール!」Vol.1(2007年6月号)掲載、Vol.6(2008年6月号)~Vol.12(2009年6月号)連載

・「まんがタイムオリジナル」2008年4月号、2009年1月号掲載

・「まんがタイム」2008年7月号、2009年2月号掲載、2013年1月号~同11月号連載

・「まんがタイムスペシャル」2008年4月号掲載、2009年2月号、2009年10月号~2010年1月号連載、同4月号,6月号,8月号隔月連載、同10月号~連載中

・「まんがタイムコレクション」2011年9月号、2012年10月号掲載

タイム系列の作品全般に言えることでもありますが、とにかく系列誌への移籍や出張掲載などが非常に多いです。『恋愛ラボ』の連載は4誌にもわたり、ゲスト掲載も含めると6誌にまたがっています。連載開始から現在までのタイム系列誌が8誌*1なのでほとんどの雑誌に掲載歴があることがわかります。(「エール」は「まんがタイムきららキャラット」増刊なので厳密にはきらら系列ですが)

まんがホーム 2006年 12月号 [雑誌]

まんがホーム 2006年 12月号 [雑誌]

まんがホーム」2006年11月号でのゲスト掲載を経て、同12月号より連載開始。11月号表紙に小さく「特別ゲスト 宮原るり」と確認できます。「タイム」で『みそララ』連載中の宮原先生によるゲスト掲載という体ですが、これが実質の『恋愛ラボ』第一話であり、連載が始まる翌月号はこのエピソードの続きから始まります。12月号表紙のカットが初表紙。ここからおよそ4年間、系列誌数誌にまたがる『恋愛ラボ』の文字通りのホームとして連載されることとなります。

コミック エール ! 2009年 02月号 [雑誌]

コミック エール ! 2009年 02月号 [雑誌]

連載開始から半年後、「コミックエール!」創刊号に出張掲載。「男の子向け少女マンガ誌」というコンセプトで創刊した「コミックエール!」、Vol.1での掲載を経て一年後のVol.7より連載となりました。残念ながら2年で休刊となってしまいましたが、上述したように「まんがタイムきららキャラット」の増刊という位置づけの雑誌だったので、もし連載が長期間続いていれば『恋愛ラボ』単行本がきららレーベルから刊行される可能性ももしかしたらあったのかもしれません。表紙にカットが載ったのはこのVol.10のみ。

まんがタイムスペシャル 2008年 04月号 [雑誌]

まんがタイムスペシャル 2008年 04月号 [雑誌]

連載開始から一年半、2008年は系列誌への進出が目立つ年となりました。1巻発売記念ということで、この年の4月はなんと「ホーム」に加え、「オリジナル」「スペシャル」でもゲスト掲載という大攻勢でした。…ということですいません、前回の記事で「タイスペ初掲載が2009年10月号」と書いてしまいましたが、この号が初掲載でした。ちなみに「タイム」の『みそララ』も通常通り掲載されており、また「ホーム」目次4コマ「おはなしあやちゃん。」も載っていて…宮原先生の仕事量たるや、この月が過去最高ではないでしょうか。また翌年1,2月にも2巻発売に合わせて同様のゲスト掲載が行われており、2巻,3巻は奥付がすごいことになっています。

2009年10月号より「タイスペ」での並行連載スタート。とはいえ本格的に「タイスペ」での連載が始まる翌年10月までの一年間は「ホーム」が中心でした。2010年1月号では4巻&ドラマCD発売記念ということで『らいか・デイズ』とのコラボ表紙が実現します。(画像が見つからなかったのですが、宮原先生のブログにラボ側のイラストが載っているので要参照)移籍後は「ホーム」2010年10,11月号において特別編が掲載され、これが「ホーム」での今のところ最後の掲載となりました。

掲載期間で言えば今や「タイスペ」の方が長くなりましたが、「ホーム」で連載されていた3年9ヶ月という期間は、後追いの自分にとってまだまだ未開の地であり、通り一遍の情報しか把握していないので、当時の雑誌を目にする機会があればもう少し深く潜ってみようと思いました。最終的には奥付からは判断できない各エピソードと掲載誌/号を紐付けられたらなと。

まんがタイム 2013年 08月号 [雑誌]

まんがタイム 2013年 08月号 [雑誌]

2013年1月号より、4年ぶりの「タイム」で連載開始。『恋愛ラボ』アニメ化に伴い、「タイム」において4コマ形式ではない特別編の連載が始まりました。(代わりに『みそララ』が現在まで続く休載期間へと突入しましたが、当時既に『僕らはみんな河合荘』が連載中なので、仕事量としては相変わらずの月刊連載×3という恐ろしい量)この特別編は9巻を中心にまとめられています。特筆事項としては5月号のみ4コマ形式である点(8巻収録の修学旅行回)、そして9月号のマキ姉回は今のところ単行本未収録であるという点。単行本では本筋の進行に合わせて合間に特別編を挿入するという形式をとっているため、10,11月号掲載分が先に10巻に収録されたものと見られます。おそらく次巻に収められるのではないでしょうか。「タイム」ではこの『おとぼけ課長』とのコラボ表紙が恒例ですが、特に上に挙げた8月号などは一部界隈で援交とまで言われるほどに好評(?)だったので、「やるよ………………」とともに後世に語り継ぎたいものです。

最後に前回同様一覧表にて掲載誌の変遷をまとめます。縦にだーっと勢い良くスクロールしましょう。















備考
2006年11月号 「ホーム」ゲスト掲載
2006年12月号 「ホーム」連載開始
2007年1月号
~5月号
2007年6月号 「エール」掲載
2007年7月号
~2008年3月号
2008年4月号 1巻発売
2008年5月号
2008年6月号 「エール」連載開始
2008年7月号 「タイム」『みそララ』との2本立て
2008年8月号
2008年9月号
2008年10月号
2008年11月号
2008年12月号
2009年1月号 2巻発売
2009年2月号
2009年3月号
2009年4月号
2009年5月号
2009年6月号
2009年7月号
2009年8月号
2009年9月号
2009年10月号 スペシャル」連載開始
2009年11月号
2009年12月号
2010年1月号 4巻,ドラマCD発売/「ホーム」『らいか・デイズ』とのコラボ表紙
2010年2月号
2010年3月号
2010年4月号
2010年5月号
2010年6月号
2010年7月号
2010年8月号
2010年9月号
2010年10月号 スペシャル」へ移籍/「ホーム」特別編掲載
2010年11月号 「ホーム」特別編掲載
2010年12月号
~2011年8月号
2011年9月号 宮原るりコレクション」発売
2011年10月号
~2012年9月号
2012年10月号 宮原るりコレクション」第2弾発売
2012年11月号
2012年12月号
2013年1月号 アニメ化決定/「タイム」特別編短期連載開始
2013年2月号
2013年3月号
2013年4月号
2013年5月号 「タイム」4コマ形式
2013年6月号
2013年7月号
2013年8月号
2013年9月号
2013年10月号
2013年11月号
2013年12月号~2015年1月号


並行連載の時期は大きく分けて①「ホーム」と「エール」②「ホーム」と「タイスペ」③「タイスペ」と「タイム」の3回訪れていることがわかります。そこにプラスアルファとして、単行本発売などの節目には系列誌への出張掲載が行われているというかたちです。①で研究編/実践編と内容が区別され連載されていたものが「エール」休刊に伴い実践編が「タイスペ」へと引き継がれ、②の時期が「タイスペ」への一本化を図るための移行期間となり、移行後の③はアニメに合わせて本編を補填する特別編との併載が行われるという、それぞれに異なる背景が存在しています。研究編/実践編の一本化については、上でも触れた宮原先生のブログにおいて言及されています。

恋愛ラボは、ホームとスペシャル(もともとはコミックエールですな)でちょっと内容的に相違がある特殊な形態だったんですが、話が進んでいくにつれ、同じ情報を共有していない状態で各読者が違和感なくまず読めること、さらにそれぞれに山場をつくりながらも単行本にまとめたときに齟齬や流れの濁りがないように気をつけながらネームをきる…というのがかなり難しくなっていて。これから先もっと厳しくなることがわかったので、1本にしたいと以前からお願いしていまして…。 へっぽこですが。 恋愛ラボの今後について

恋愛ラボ』の掲載誌の変遷は、一つの作品から異なるシチュエーションを切り出そうとする特殊な制約が課された並行連載に端を発しているわけですが、登場人物の二面性を描き出すという点では後の特別編に受け継がれているように思います。単行本を通読すると『恋愛ラボ』は宮原先生の他作品と比べても特に出来事や心情が丁寧に描写されている印象を受けるのですが、それは本筋の進行に合わせて別の切り口で語ることのできるもう一つの連載の存在があったからこそなのだと強く感じました。もちろんそれだけの情報を整理し描き出す難しさがあり、単純に倍の仕事量としてのしかかってくるわけでもあり、その苦労たるや想像に容易いです。今回はあまり触れませんでしたが、ここまで見てきた『恋愛ラボ』連載期間には『となりのネネコさん』『みそララ』『河合荘』も同じく連載作品として存在しているので、やはり宮原先生の仕事量恐るべしといった結論に落ち着くのでした。そんなわけでいつか他作品も含めた宮原先生の全お仕事チャートを完成させようという決意を新たにする次第でございます。まさかの4部作だった…。