『僕らはみんな河合荘』6巻・雑誌掲載時と加筆修正の比較[後編]
ずいぶんと空いてしまいましたが、前回の続きです。引き続き細かな線の修正には言及せず、主な加筆修正箇所について見て行きたいと思います。
・『僕らはみんな河合荘』6巻・雑誌掲載時と加筆修正の比較[前編] - 金魚警報(再)
第5話(「アワーズ」2014年8月号掲載)
p87 4コマ目:律の目にハイライト追加
p92 4コマ目:文字「妖怪ネコロ」追加
今巻の奥付にも描かれているネコロさん。ネネコさんの魂が宿っているに違いない。『恋愛ラボ』ではリコの鞄に付いているキーホルダーとして登場しており、9巻巻頭の人物紹介でも触れられています。今回の登場により宮原作品を横断する数少ないキーアイテムとなりました。背中(?)にも目が付いている事が判明。
p95 2コマ目:宇佐(似の新人)ネクタイにトーン追加
p102 7コマ目:律の全身黒塗りに
p103 5コマ目:広瀬の表情追加
名前が登場するのはもう少し後のことなので、この段階ではまだ律ちゃんを取り巻くクラスメイトの一人としてもモブとしても中途半端な立ち位置です。
p104 1コマ目:律のメールが描き文字→活字化
p107 3コマ目:擬音「ばっ」線の囲いが追加
p107 6コマ目:律の足音の擬音「タッ」追加
急いで来たんだなぁと思うと阿呆らしくも切ないシーン。
p108 2コマ目:前村のスカートにトーン、宇佐の靴に黒塗り部分追加
p110 2コマ目:擬音「ぷ」文字と枠の白黒反転
第6話(「アワーズ」2014年9月号掲載)
p113 2コマ目:住子台詞変更「優しいの?」→「その『優しい』は新しいわねー」
p115 2コマ目:住子台詞変更「優しいの?」→「新しいわー」
麻弓さんのボケへの応対が明らかに小慣れつつある住子さん。
p120 1コマ目:ツネコ台詞「今ファッション戻ってきとるからって」追加
バブリーな化粧は会社の先輩のせいだったのでした。
p120 4コマ目:通行人追加
長良川沿いから臨むこの背景は実在の風景から起こしたものと思われ、河合荘御一行が向かった温泉施設が長良川観光ホテル石金(がモデルの施設)だということが分かります。
p122 2コマ目:宇佐台詞変更「ハイ ソウデス」→「ウン ミナイネ」
p126 1コマ目:麻弓台詞変更「現実にはどこにもねーからな」→「現実にはどこにもねーから騙されないよう気をつけろよ!」
p129:描き下ろし
Uターン就職を巡る彩花とツネコのやり取りに描き下ろしページが追加され、彩花の過去の一端が詳らかになりました。このページの挿入に伴い前後のページにも変更が見られ、ここでも構成の妙が炸裂しています。p128左下のコマのツネコの台詞が「卒業したら帰ってくるって約束しとったやん」→「だって家出るとき」と変更され、描きおろし場面への導入となります。そしてp130の1コマ目も前ページでのやり取りを受けての台詞に変更されています。つまり
雑誌掲載時はこのように連続する流れだったものが(左→右)、単行本化にあたり間に1ページ追加され、その前後にあたるこの二コマにも修正が施されたということになります。描写自体を変更するのではなく台詞と表情に少し手を加えることで自然な会話の流れを切ること無くエピソードを展開していく様はやはり職人芸であると唸らざるを得ません。
描きおろし場面では卒業後田舎に帰るという約束を「そんなの守るわけないじゃん」と改めて一蹴する彩花ですが、それを受けてなお「嘘だよ」と穏やかな眼差しを浮かべ言い切るツネコが印象的で、彩花に対する厚い信頼が窺える場面となりました。不意を打たれたような表情の彩花と対照的に映ります。たった1ページの挿入で彩花のバックボーンが語られると同時に、ささやかなやり取りからナベツネの関係性を見ることができるという面白さもあり、個人的にとても好きな加筆修正箇所です。
p132 4コマ目:ツネコ指にトーン追加・画面の文字が大きくなる
同7コマ目:左の人物に目が追加
第7話(「アワーズ」2014年10月号掲載)
p161 1コマ目:林の鞄アクセサリーに描き込み追加
ハート型のキーホルダーにKの文字…和成のKに違いない。
同:林ぶち抜きがコマの隙間に進出(?)
間違い探し。
同 4コマ目:描き文字「ケッ」描き直し
同 7コマ目:椅子にトーン追加
p162 3コマ目:妖怪ネコロのイヤホンジャックの位置変更
p171の3コマ目に同じカットが貼られていますが、こちらは雑誌掲載時のままとなっています。
p175:色々変更
ぜひ単行本と見比べていただきたいと思います。雑誌掲載時の流れとしては、1コマ目麻弓台詞「USAくん♡ やるなこいつめぇぇエエ"エ"」
↓
「どこからでも切れる~」が削除され代わりに「最大出力で心と一緒に体もスパーク~」台詞が追加され、それに伴い周辺の台詞の配置が変更されたかたちです。その他影や効果の描き込みが追加されていますが、特に麻弓さんの表情の変化がおぞましいです。
魔弓さん…
p176 3コマ目:シロ服にトーン追加
貼り忘れかと思われます。ヒャッホゥ!
p177 4コマ目:椎名の口削除
p181 1コマ目:集中線トーンが吹き出し内から削除
同 5コマ目:麻弓台詞変更「わけわからんがクソ腹立つ」→「わけわからんがクソイラァ」&擬音「ドゴォ」派手に描き直し
p182,183:描き下ろし
シロさんの宇佐へのアドバイスが炸裂する(しない)描き下ろし2ページ。これまで見てきた例と同じく、ここでも描き下ろしページ前後の構成に変化が見られます。p181の5コマ目の宇佐ナレーション「俺の恋愛劇場は空回ってなんかない そりゃ劇的な展開はないけど/ちゃんと変わってるんだから」が少し文面を変えてp183の3コマ目へ移動しています。
p184:描き込み追加
雑誌掲載時は他のページに比べ全体的に描き込みが薄く、人物の目が白抜きとなっていたのが修正されました。おつかれさまです…!
p185 2コマ目:高橋の顔描き直し
高橋はそんな顔しない、みたいな意志を感じます。
というわけで以上が6巻における主な加筆修正箇所でした。傾向としては線や影、トーンの追加が特に多く、やはり人物の描写に重きが置かれていると言えます。また描き文字・活字のバランスや集中線の配置など、画面全体の色合いや見やすさといった点にも意識的に取り組んでおられるように感じました。
椎名・高橋の登場により揺れ動く宇佐と律ちゃんをはじめ、人物の感情の揺らぎを表すような重要な場面において特に繊細な加筆修正が施されています。描き下ろしページの挿入は3箇所4ページにわたり、これは前回見た『恋愛ラボ』よりも多いですね。描き下ろされる場面は総じて登場人物の内面を掘り下げる重要な役割を果たしており、何気ないやりとりの中で第三者の示唆に富んだ台詞が飛び出す点も見逃せません。シリアスパートにおけるシロさんの役割が固まりつつある気がします。整合性をとるため前後のページの台詞や構成が変更されるものの、コマ割りや人物の配置、吹き出しの位置などはそのまま流用されるパターンが多く見受けられ、再三言ってますがこれは結構凄いことをやってのけてるのではと感じます。
その他の修正箇所としてはやはりスタンガン片手に長広舌かます麻弓さんが印象的です。『河合荘』のネタ出しに四苦八苦しているというのはいつだったか宮原先生自身が仰っていたことですが、こういう小ネタに関しては引き出しが無数に存在しているのだなと感心することしきりです。この言語感覚がギャグシーンにおける魅力を生み出していることは言うまでもありません。
こうして一つ一つ見ていくと改めて加筆修正箇所の多さに驚きます。時間的な制約により連載では満足の行く出来に持って行くことが難しいからなのか、単行本に対するサービス精神が現れなのかは図りかねますが、なんとなく前者な気はします。これだけの加筆修正量は売りにしても良いぐらいだと思うのですが、元々頭に思い描いている描写に近づけることが目的なのだとすれば、さもありなんといったところでしょうか。
連載だけで満足しているという方にも、一読の価値は大いにあると声を大にして言いたい、と同時に、このように見比べる歪んだ楽しみ方ができるので単行本派の方もぜひ「アワーズ」本誌をお手にとってみてはいかがでしょう、と布教することで締めとさせていただきます。
『恋愛ラボ』表紙の「まんがタイムスペシャル」5年目にしてついにあの人が
エノ先輩単独表紙おめでとうございます!
…これを言いたいがための記事なので悪しからず。
というわけで、本日発売の「まんがタイムスペシャル」2015年3月号の表紙をもわもわゆるふわ砂糖菓子ガール榎本結子大先輩が飾っています。2010年10月号より続いている『恋愛ラボ』表紙ですが、リコ、マキ以外の登場人物が単独で表紙を飾るのは今回が初めてとなります。通算53冊目にして初の快挙。
『恋愛ラボ』表紙の「まんがタイムスペシャル」が50冊を越えたので振り返ろう - 金魚警報(再)
以前にも触れましたが、かつてエノとマキのツーショットが表紙を飾ったことがありました。
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今回はここからさらに飛躍を遂げたと言えます。とはいえ本編では特にエノが活躍するターンではないので、なぜこのタイミングでのエノ表紙なのか、というのはいずれ宮原先生自身が言及されるとは思いますが、推測するに、リコとマキでバレンタイン表紙をすでに4回飾っているから、というのが大きいと思います。
左から順に2011年、2012年、2013年、2014年。こうしてみると風邪引いてるのかってぐらい半端ない赤面率なのですが、これこそがバレンタイン表紙の肝なので、毎回ポーズや仕草でバリエーションを出すというのも難しいと思われます。しかし「やるよ…」から続く恒例表紙を途絶えさせるわけにも行かず…よろしい、ならばエノだ。
…みたいな流れがあったかどうかは定かではありませんがそれはさておき、宮原先生曰く「似た名前が多いので目印にする意味もある」というタイム系列誌の表紙において、主人公ではない人物が単独で表紙を飾ったという事実は、リコやマキといったキャラクターだけでなく宮原先生の絵柄による存在感があってこそ実現できたものだと思いますし、作り手からすれば結構な英断なんじゃないかという気がします。それにGOサインを出せるぐらいにはこの4年で「タイスペ」の顔として読者内外に認知されたのだと言えましょう。
これからの「タイスペ」表紙では今後もこういった変化球が見られるのかもしれません。個人的にはリコとナギ、マキとヤンといった具合で男子が表紙に進出したら面白いんじゃないかと思うのですが、さすがに難しいか…「きらら」じゃないからなんとか。
来年はスズに違いない。サヨは引き受けてくれない。
『僕らはみんな河合荘』6巻・雑誌掲載時と加筆修正の比較[前編]
以前『恋愛ラボ』10巻を引き合いに宮原先生の恐るべき加筆修正量を見たわけですが、4コマとは異なる魅せ方が要求される『河合荘』においてはどのような変更点が見られるのでしょうか。わたし気になります!
『恋愛ラボ』10巻・加筆修正と雑誌掲載時の比較 - 金魚警報(再)
ということで『僕らはみんな河合荘』単行本最新6巻と掲載誌「ヤングキングアワーズ」における内容の異同を見て行きたいと思います。話数及びページ数は単行本に準拠、画像比較の際は左が「アワーズ」、右が単行本となります。
『恋愛ラボ』と異なり『河合荘』では加筆修正が施された旨が単行本巻末に記載されていないのですが、それが不思議なぐらい随所に手が加えられておりました。
・第1話(「アワーズ」2014年4月号掲載)
p5 3コマ目:宇佐のパーカーに模様追加
雑誌掲載時はこの右頁のコマでしか描かれていなかった宇佐パーカーの模様?絵柄のプリントが、以降の全頁にわたり追加されました。周りのトーンが薄いので英語部分はちょっと解読できません。
p5 4コマ目:宇佐台詞の書体が白枠黒文字→白文字に
p6 5コマ目:宇佐台詞変更
「キスぐらいなら別にっっ」→「キスぐらいなら まぁ大した事じゃないけどっ」雑誌掲載時は強がっていたU.S.Aさんもこの通り。冒頭から宇佐修正3連発。
p7 2コマ目:律台詞が白枠黒文字→白文字に
p8 1コマ目:
このコマでは5つもの変更点が見られます。レッツシンギング。
正解は店員台詞修正「502号室へどーぞー」→「302号室へどうぞー」、麻弓アホ毛追加 、住子帯模様追加、彩花台詞微修正「1人で鬼予約とかしんじらんなーい」→「一人で鬼予約とか信じらんなーい」、+上述の宇佐パーカー加筆の計5箇所でした。このコマは宮原先生による代表的な加筆修正の例が複数見られる象徴的な一コマとなっています。
号室が変更された意図は図りかねますが、以降背景に登場する部屋番号表示の札も3階フロアに統一されています。p14 4コマ目のみ背景の部屋番号表記が508、509となっており、宇佐と律ちゃんが飲み物を買いに来たのが5階フロアであることがわかります。そこまで行かないと自販機がないカラオケ店…!
この麻弓さんのように撥ねた髪の毛が追加されたりボリュームアップが施される魅惑の増毛体験的加筆はぶち抜きや大コマで多く見られ、『恋愛ラボ』でも同様の加筆が見受けられました。住子さんの帯は白から黒地に水玉へと変更され、以後該当する全てのコマで修正が施されています。こちらも併せて描き込み量の強化という真っ当な加筆修正と言えましょう。彩花の描き文字台詞の微修正は、『恋愛ラボ』での例を考えるとどちらかと言えば表記の変更よりも描き文字の字体やバランスの修正がメインなのではと思います。
p9 1コマ目:モニターの曲名/歌手表示が描き文字→活字に
同時に表記が雑誌掲載時の「斉藤和義」(「和」の字が吹出しで8割ほど隠れる)から「斉藤義和」に変更。また同コマの彩花の服にしわ追加。
p9 2コマ目:宇佐台詞に描き文字「しぶい」追加
p9 3コマ目:モニターの曲名/歌手表示が描き文字→活字に&擬音「パッ」描き直し
p10 1コマ目:彩花足音の表記変更「トン トン」→「トン❤ トン❤」
p10 2コマ目:彩花の頬にトーン追加
彩花先生のあざとさに磨きがかかる。
p10 4コマ目:宇佐の口が消える
p10 5コマ目:宇佐独白「レパートリー広いっすね 人格の」→台詞に変更、同時に口が一本線→半開きに、彩花服しわ追加、ソファーしわ削除
p10 6コマ目:モニターの曲名/歌手表示が描き文字→活字に、擬音「パッ」追加
p10 8コマ目:彩花目元にトーン追加
このページの修正、尋常じゃない量です。
p11 2コマ目:テーブルの影トーンのはみ出し修正、端末の移動線が増量
p11 3コマ目:麻弓台詞の書体が白枠黒文字→白文字に
p11 4コマ目:麻弓台詞「シロの分際で歌う気か・・・?」描き文字→活字に
p12 2コマ目:麻弓・チャーミーさんの震え線増量
p12 4コマ目:律服に影追加
p13 1コマ目:宇佐服に背景と同じトーンが追加
p13 2コマ目:宇佐台詞中の「心」にふりがな「ハート」追加、シロ服にプリント「世間体」追加
p14 1コマ目:宇佐服にしわ・影追加
p14 5コマ目:律スカートにしわ追加
p14 6コマ目:部屋番号札に番号表記追加
p15 1コマ目:男女に影追加、男のピアスが2つに
p15 5コマ目:男女丸人間→髪や服の加筆
p16 1コマ目:男台詞が台詞の書体が白枠黒文字→白文字に
p16 2コマ目:擬態語「びくっ」黒→白抜きに、宇佐「!?」削除
またp16 1コマ目~4コマ目の登場人物の服・髪に線・トーンが追加されています。
p17 1~4コマ目:
ここまで見てきたように、人物への細かな書き込みの追加が多く見られるわけですが、中には間違い探しレベルのものもあり、この場面などは良い例だと思われます。
1コマ目:宇佐髪加筆、首元影追加、パーカー模様追加、人差し指微修正、2コマ目:律瞳にハイライト追加、3コマ目:首元・襟の影追加、といった具合です。トーンやベタ、斜線による影の描き込みは『河合荘』において最も多く見られる加筆事項ではないでしょうか。人差し指は画像だと拡大してもらってもわかりづらいかもしれませんが、おそらくわずかにはみ出した線への対処だと思われます。
p17 4コマ目:「え!?」吹出しにトーン追加
p17 5コマ目:部屋番号追加
p17 6コマ目:部屋番号表記508 509(反転文字)→305 304に変更
p17 7コマ目:部屋番号追加
p17 8コマ目:律髪ボリュームアップ、白ツヤ追加
p18 3コマ目:麻弓胸元トーン貼り忘れ修正、しわ追加
p18 4コマ目:麻弓前髪黒→白抜きに
p19 1コマ目:麻弓髪、服に影追加
p19 2コマ目:宇佐・律の髪、服に影追加
雑誌掲載時は律ちゃんの後ろ髪が消失していました。
p19 3コマ目:住子髪に線追加
p19 4コマ目:台詞変更
麻弓さんの住人に対する認識が少し柔らかくなりました。それでもクエスチョンが2つ付くあたりが麻弓さんクオリティ。
p19 5コマ目:宇佐・律の髪、服に影追加
p20 1コマ目:麻弓目元にトーン追加、律追加
雑誌掲載時は律ちゃんがいませんでした。
p20 4コマ目:男女にトーン追加
ここまでが第1話における主な加筆修正点でした。…1話ながら既に『恋愛ラボ』一巻分に迫る分量であるという驚愕の事実。全8話収録なのでこのような加筆修正があと7話分あると思っていただければ。宮原先生、この単行本作業だけでどれほどの時間を費やしておられるのかと、考えるだに恐ろしいです。ついでにこれらの把握に自分がどれだけの時間を費やしているのかについても冷ややかに察していただければと思います。いいんだ、楽しいから…。
そういう事情なもので第2話からは登場人物の髪や服、瞳などへの加筆については基本言及しないかたちで進めていきます。2、3コマに1コマぐらいの割合で何らかの手が加えられていると思ってください。
・第2話(「アワーズ」2014年5月号掲載)
p26 4コマ目:麻弓裸眼→眼鏡着用
貴重なカラーページで眼鏡差分麻弓さんが拝めます。次ページ1コマ目の眼鏡を掛ける動作をしている麻弓さんは単行本でもそのままになっており、修正前の名残をそこに見ることができます。
p30 4コマ目:酒瓶のラベルに文字「辛口 二千盛」追加、桜増量
余談ですが岐阜の地酒「三千盛」は実在します。
p32 3コマ目:麻弓台詞中の「桜臀部」にふりがな追加
p32 4コマ目:桜増量
p34 4コマ目~p36 4コマ目:描きおろし
ここでは宇佐と律ちゃんの関係に対する麻弓さんの心境が掘り下げられています。「2人がダメになった方がいいの?」という住子さんの問いかけは、青春ぶち壊し隊長として暴虐の限りを尽くしてきた(?)麻弓さんに対して抱く読者の疑問と重なるようにも思いました。ページ単位の加筆ではなく、雑誌掲載時はp34の4,5,6コマ目がp36の5,6コマ目の位置に据えられており、コマとコマの間に麻弓さんと周囲のやり取りが挿入という特殊な形式をとっています。つまりはp34の3コマ目の次がp36の5コマ目になるという繋がり方になっているわけで、ちょっとした職人芸が展開されていると言えます。
p38 3コマ目:「焦りは禁物」の吹出しの変更
○型の吹出しから心中思惟を表す吹き出し(名前あるんだろうか)に変更されています。この変更により宇佐のモノローグであることが判明しましたが、雑誌掲載時は次のコマと合わせてシロさんのモノローグだと捉えることもできました。が、「焦りは禁物」に対する「意識改革が必要」となるのでやはり宇佐のモノローグでないと不自然…と今気づきました、はい。
p39 2コマ目:クラスの表札が描き文字→活字に
p39 3 コマ目:モブにトーン追加
p39 6コマ目:前村笑い声「あははっ」追加
p41 7コマ目:吹き出しの透過がなくなる
第3話(「アワーズ」2014年6月号掲載)
p53 1コマ目:彩花台詞に吹き出しが付く+活字に
p53 2コマ目:宇佐の台詞が宇佐の右下→左下に移動
p53 5コマ目:麻弓台詞「はぁー!?」黒→白抜きに
p54 1コマ目:麻弓台詞「万が一モテキなら潰す」の中に「すみやかに」追加
麻弓さんらしい悪即斬な形容動詞が。
p55 4コマ目:宇佐台詞が描き文字→活字に
p57 3,4コマ目:宇佐台詞の文字と吹き出しの白黒反転
p57 5コマ目:宇佐台詞白黒反転、宇佐、麻弓追加
これはちょっと珍しい加筆かもしれません。
p60 2コマ目:シロさんの足追加
でも一本線なのだった。ヒャッホゥ!
p60 4コマ目:佐久間台詞→活字・ナレーションに
p60 4コマ目:麻弓表情変更
酒ヤケ感は減りましたがより切実さが増しました。
p61 1コマ目:背景に擬音追加
後ろで佐久間のブレイブストーリーが。
p61 6コマ目:父親デザイン変更
第6話に1コマだけ登場する探偵っぽい紳士と似ているからでしょうか。
p63 4コマ目:描き文字「HAPPY♡BIRTH DAY」、プレゼント追加
p64 4コマ目:麻弓台詞変更「おー」→「おーいいぞ」、シロ「いやっふー」太字に
・第4話(「アワーズ」2014年7月号掲載)
p70 1コマ目:シロ台詞「ほばくー」追加
p71 2コマ目:宇佐台詞?白黒反転
p78 4コマ目:宇佐の輪郭修正
雑誌掲載時はよりデフォルメが強い表情でした。
p84 1,2コマ目:広瀬、律、前村の瞳にハイライト追加
放課後の青春模様に皆の目もきらっきら。
ということで1~4話までの加筆修正をざっと見てまいりました。第1話の異常な修正量を思えば第4話などはやや控えめに映ります。まとめは後半部分を概観してからにしますが、ひとまずここまでの加筆修正の特徴としては『恋愛ラボ』で見たものと大きく異なるものではないと言えるでしょう。分量の違いは4コマと対照的に断ち切りが多く、ページの隅々まで絵が描き込まれているからという単純な理由に起因していると思われます。
少し間が空くかもですが、後編へと続きます。
YOUNGKING OURS (ヤングキングアワーズ) 2014年 05月号 [雑誌]
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『恋愛ラボ』4誌に及ぶ掲載誌の変遷を追う
痒いところに手を届かせたい『恋愛ラボ』記事三部作のラストです。
今でこそ「まんがタイムスペシャル」の顔として定着した感のある『恋愛ラボ』ですが、連載開始から現在に至るまで、やや複雑な掲載誌の変遷を辿ってきました。
・「まんがホーム」2006年11月号掲載、同12月号~2010年9月号連載
・「コミックエール!」Vol.1(2007年6月号)掲載、Vol.6(2008年6月号)~Vol.12(2009年6月号)連載
・「まんがタイムオリジナル」2008年4月号、2009年1月号掲載
・「まんがタイム」2008年7月号、2009年2月号掲載、2013年1月号~同11月号連載
・「まんがタイムスペシャル」2008年4月号掲載、2009年2月号、2009年10月号~2010年1月号連載、同4月号,6月号,8月号隔月連載、同10月号~連載中
・「まんがタイムコレクション」2011年9月号、2012年10月号掲載
タイム系列の作品全般に言えることでもありますが、とにかく系列誌への移籍や出張掲載などが非常に多いです。『恋愛ラボ』の連載は4誌にもわたり、ゲスト掲載も含めると6誌にまたがっています。連載開始から現在までのタイム系列誌が8誌*1なのでほとんどの雑誌に掲載歴があることがわかります。(「エール」は「まんがタイムきららキャラット」増刊なので厳密にはきらら系列ですが)
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「まんがホーム」2006年11月号でのゲスト掲載を経て、同12月号より連載開始。11月号表紙に小さく「特別ゲスト 宮原るり」と確認できます。「タイム」で『みそララ』連載中の宮原先生によるゲスト掲載という体ですが、これが実質の『恋愛ラボ』第一話であり、連載が始まる翌月号はこのエピソードの続きから始まります。12月号表紙のカットが初表紙。ここからおよそ4年間、系列誌数誌にまたがる『恋愛ラボ』の文字通りのホームとして連載されることとなります。
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連載開始から半年後、「コミックエール!」創刊号に出張掲載。「男の子向け少女マンガ誌」というコンセプトで創刊した「コミックエール!」、Vol.1での掲載を経て一年後のVol.7より連載となりました。残念ながら2年で休刊となってしまいましたが、上述したように「まんがタイムきららキャラット」の増刊という位置づけの雑誌だったので、もし連載が長期間続いていれば『恋愛ラボ』単行本がきららレーベルから刊行される可能性ももしかしたらあったのかもしれません。表紙にカットが載ったのはこのVol.10のみ。
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連載開始から一年半、2008年は系列誌への進出が目立つ年となりました。1巻発売記念ということで、この年の4月はなんと「ホーム」に加え、「オリジナル」「スペシャル」でもゲスト掲載という大攻勢でした。…ということですいません、前回の記事で「タイスペ初掲載が2009年10月号」と書いてしまいましたが、この号が初掲載でした。ちなみに「タイム」の『みそララ』も通常通り掲載されており、また「ホーム」目次4コマ「おはなしあやちゃん。」も載っていて…宮原先生の仕事量たるや、この月が過去最高ではないでしょうか。また翌年1,2月にも2巻発売に合わせて同様のゲスト掲載が行われており、2巻,3巻は奥付がすごいことになっています。
2009年10月号より「タイスペ」での並行連載スタート。とはいえ本格的に「タイスペ」での連載が始まる翌年10月までの一年間は「ホーム」が中心でした。2010年1月号では4巻&ドラマCD発売記念ということで『らいか・デイズ』とのコラボ表紙が実現します。(画像が見つからなかったのですが、宮原先生のブログにラボ側のイラストが載っているので要参照)移籍後は「ホーム」2010年10,11月号において特別編が掲載され、これが「ホーム」での今のところ最後の掲載となりました。
掲載期間で言えば今や「タイスペ」の方が長くなりましたが、「ホーム」で連載されていた3年9ヶ月という期間は、後追いの自分にとってまだまだ未開の地であり、通り一遍の情報しか把握していないので、当時の雑誌を目にする機会があればもう少し深く潜ってみようと思いました。最終的には奥付からは判断できない各エピソードと掲載誌/号を紐付けられたらなと。
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最後に前回同様一覧表にて掲載誌の変遷をまとめます。縦にだーっと勢い良くスクロールしましょう。
ホ │ ム |
エ │ ル |
オ リ ジ ナ ル |
ス ペ シ ャ ル |
タ イ ム |
備考 | |
---|---|---|---|---|---|---|
2006年11月号 | ○ | 「ホーム」ゲスト掲載 | ||||
2006年12月号 | ○ | 「ホーム」連載開始 | ||||
2007年1月号 ~5月号 |
○ | |||||
2007年6月号 | ○ | ○ | 「エール」掲載 | |||
2007年7月号 ~2008年3月号 |
○ | |||||
2008年4月号 | ○ | ○ | ○ | 1巻発売 | ||
2008年5月号 | ○ | |||||
2008年6月号 | ○ | ○ | 「エール」連載開始 | |||
2008年7月号 | ○ | ○ | 「タイム」『みそララ』との2本立て | |||
2008年8月号 | ○ | ○ | ||||
2008年9月号 | ○ | |||||
2008年10月号 | ○ | ○ | ||||
2008年11月号 | ○ | |||||
2008年12月号 | ○ | ○ | ||||
2009年1月号 | ○ | ○ | 2巻発売 | |||
2009年2月号 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
2009年3月号 | ○ | |||||
2009年4月号 | ○ | ○ | ||||
2009年5月号 | ○ | |||||
2009年6月号 | ○ | ○ | ||||
2009年7月号 | ○ | |||||
2009年8月号 | ○ | |||||
2009年9月号 | ○ | |||||
2009年10月号 | ○ | ○ | 「スペシャル」連載開始 | |||
2009年11月号 | ○ | ○ | ||||
2009年12月号 | ○ | ○ | ||||
2010年1月号 | ○ | ○ | 4巻,ドラマCD発売/「ホーム」『らいか・デイズ』とのコラボ表紙 | |||
2010年2月号 | ○ | |||||
2010年3月号 | ○ | |||||
2010年4月号 | ○ | ○ | ||||
2010年5月号 | ○ | |||||
2010年6月号 | ○ | ○ | ||||
2010年7月号 | ○ | |||||
2010年8月号 | ○ | ○ | ||||
2010年9月号 | ○ | |||||
2010年10月号 | ○ | ○ | 「スペシャル」へ移籍/「ホーム」特別編掲載 | |||
2010年11月号 | ○ | ○ | 「ホーム」特別編掲載 | |||
2010年12月号 ~2011年8月号 |
○ | |||||
2011年9月号 | ○ | 「宮原るりコレクション」発売 | ||||
2011年10月号 ~2012年9月号 |
○ | |||||
2012年10月号 | ○ | 「宮原るりコレクション」第2弾発売 | ||||
2012年11月号 | ○ | |||||
2012年12月号 | ○ | |||||
2013年1月号 | ○ | ○ | アニメ化決定/「タイム」特別編短期連載開始 | |||
2013年2月号 | ○ | ○ | ||||
2013年3月号 | ○ | ○ | ||||
2013年4月号 | ○ | ○ | ||||
2013年5月号 | ○ | ○ | 「タイム」4コマ形式 | |||
2013年6月号 | ○ | ○ | ||||
2013年7月号 | ○ | ○ | ||||
2013年8月号 | ○ | ○ | ||||
2013年9月号 | ○ | ○ | ||||
2013年10月号 | ○ | ○ | ||||
2013年11月号 | ○ | ○ | ||||
2013年12月号~2015年1月号 | ○ |
並行連載の時期は大きく分けて①「ホーム」と「エール」②「ホーム」と「タイスペ」③「タイスペ」と「タイム」の3回訪れていることがわかります。そこにプラスアルファとして、単行本発売などの節目には系列誌への出張掲載が行われているというかたちです。①で研究編/実践編と内容が区別され連載されていたものが「エール」休刊に伴い実践編が「タイスペ」へと引き継がれ、②の時期が「タイスペ」への一本化を図るための移行期間となり、移行後の③はアニメに合わせて本編を補填する特別編との併載が行われるという、それぞれに異なる背景が存在しています。研究編/実践編の一本化については、上でも触れた宮原先生のブログにおいて言及されています。
恋愛ラボは、ホームとスペシャル(もともとはコミックエールですな)でちょっと内容的に相違がある特殊な形態だったんですが、話が進んでいくにつれ、同じ情報を共有していない状態で各読者が違和感なくまず読めること、さらにそれぞれに山場をつくりながらも単行本にまとめたときに齟齬や流れの濁りがないように気をつけながらネームをきる…というのがかなり難しくなっていて。これから先もっと厳しくなることがわかったので、1本にしたいと以前からお願いしていまして…。 ―へっぽこですが。 恋愛ラボの今後について
『恋愛ラボ』の掲載誌の変遷は、一つの作品から異なるシチュエーションを切り出そうとする特殊な制約が課された並行連載に端を発しているわけですが、登場人物の二面性を描き出すという点では後の特別編に受け継がれているように思います。単行本を通読すると『恋愛ラボ』は宮原先生の他作品と比べても特に出来事や心情が丁寧に描写されている印象を受けるのですが、それは本筋の進行に合わせて別の切り口で語ることのできるもう一つの連載の存在があったからこそなのだと強く感じました。もちろんそれだけの情報を整理し描き出す難しさがあり、単純に倍の仕事量としてのしかかってくるわけでもあり、その苦労たるや想像に容易いです。今回はあまり触れませんでしたが、ここまで見てきた『恋愛ラボ』連載期間には『となりのネネコさん』『みそララ』『河合荘』も同じく連載作品として存在しているので、やはり宮原先生の仕事量恐るべしといった結論に落ち着くのでした。そんなわけでいつか他作品も含めた宮原先生の全お仕事チャートを完成させようという決意を新たにする次第でございます。まさかの4部作だった…。
*1:「エール」を除く上記5誌+「まんがタイムファミリー」「まんがタイムジャンボ」「まんがタイムラブリー」
『恋愛ラボ』表紙の「まんがタイムスペシャル」が50冊を越えたので振り返ろう
「まんがタイムスペシャル」2010年10月号から続く『恋愛ラボ』表紙号が50冊を越えたので*1勝手に振り返ります。完全に自分用メモです。
・2009年10月号、移籍連載開始
「まんがホーム」「コミックエール」での並行連載を経て、「タイスペ」での連載に一本化されたのがこの号です。この頃は数ヶ月に渡る休載や隔月連載など不定期な掲載が続いており、本格的な連載が始まるのは表紙担当が始まる一年後を待つこととなります。(このあたりの複雑な掲載チャートはいずれまとめたいと思います)
・2010年10月号:単独表紙開始号
現在まで続く表紙の最初の号となりました。この号の掲載分からちょうど単行本6巻に突入することとなります。そういう意味では6巻の表紙が突然真っ赤なデザインになったのも節目という意味でなかなか象徴的です。(とはいえ7巻からまた戻ってしまったので特に理由はなかったように思いますが…。リコの赤面が表紙に飛び火したに違いない。)研究編/実践編と独立していた連載が一本化されたことで、この号からしばらくは前半が生徒会メンバー中心の恋愛研究、後半がいりきみ塾における男子陣との交流を描くという構成となりました。
・リコ、マキのツーショット表紙が続く
やはり主役の二人ということで、これまで表紙にカットが掲載された時と同様、ツーショット表紙が続くこととなります。たまに背景にスズ、エノ、サヨの3人が描かれるという構図でした。
・2011年3月号、伝説の(?)バレンタイン表紙
「やるよ………………」というコピーとともに一部界隈で話題となりました。すさまじい破壊力。
・2011年6月号、初のマキ単独表紙
樹るう先生の新連載カットが幅をとるため(?)、単独で表紙を飾ることとなったマキ。スカートに摘まれた花の中に紫陽花が見えるのがささやかな季節感の演出でしょうか。
・2011年9月号増刊「宮原るりコレクション」刊行
まんがタイム増刊号「まんがタイムコレクション」として刊行されました。リコ、マキとともに表紙を飾るは麦田美苑@『みそララ』。「大ブレイク中!」という文言からも、『恋愛ラボ』『みそララ』の2大連載で着実に人気を獲得していった形跡が窺えます。連載分の再録+描きおろしで構成されたこの「るりコレ」、『ラボ』特別編は単行本に収録されたものの、むんこ先生による宮原先生訪問エッセイや「おはなしあやちゃん」は本書でしか読むことができません(「おはなしあやちゃん」は厳密には「まんがホーム」連載分の再録ですが、未単行本化)。ゆえに翌年発売の第二弾と合わせて地味にプレミアが付いていたりする一品となっています。
・2011年10月号、久々の巻頭カラーで全員集合表紙
表紙開始号からちょうど一年後、再び5人が並ぶ表紙となりました。個人的に歴代表紙の中でも特に気に入っているイラストです。
・2011年11月号~、単独表紙が増える
この頃からリコ、マキの単独表紙が目立つようになります。関連は薄そうですが、この少し前から表紙デザインを担当されている方が交代しています。
・2012年4月号、貴重なリコ、サヨツーショット表紙
日常の何気ない仕草に無自覚な色気を放つリコとラーメン店主のサヨ。さらに背景にマキ、スズ、エノが隠れているというコミカルなお遊びが光るちょっと異色な表紙です。また、このあたりからリコ、マキが交代で単独表紙を飾るというローテーションが意識的に組まれていることが分かります。たまに入るツーショット表紙を経るとローテーションがリセットされる点にも注意です。
・2012年9月号、『笑って!外村さん』とのコラボ表紙
この号では『外村さん』ドラマCD化記念としてツーショット表紙が実現、夏緒と夏記の残酷な乳格差が図らずも露呈した記念すべき表紙となりました。表紙担当以降、現在まで唯一の他作品とのコラボ表紙です。ちなみにアニメ『恋愛ラボ』DVD/Blu-ray第一巻特典冊子「私立藤崎女子中学校生徒会レポート」所収の「まんがタイムスペシャルラフ案集」において、宮原先生作画の外村さんを拝見することができます。
・2012年10月号、エノ、表紙正式進出
マキ、エノによる貴重なツーショット表紙が実現しました。宮原先生によれば当時発売中の増刊「るりコレ」との差別化を図る意図があったとのことですが、結果的にエノが主役と並列に描かれるという珍しい表紙となりました。内容的にもエノがUK王子に陥落する重要な回だったので、エノが主役の号であったと言えます。
・2012年10月号増刊、「るりコレ」再び
発売日としては上記の10月号より先なのですが、第二弾となる「るりコレ」が発刊されました。この号収録の特別編は単行本8巻に、「るり&むんこの交換日記」はファンブック8.5巻に収録されていますが、前号収録分に引き続き「おはなしあやちゃん」が再録されているのでやはり手元においておきたい一冊です。ちなみに「るりコレ」未収録分をまとめた小冊子がCOMIC ZINでの『恋愛ラボ』10巻購入特典として付属しました。→宮原るり先生『恋愛ラボ』10巻に8ページ小冊子&イラストカードをプレゼント
・2013年1月号、アニメ化決定告知表紙
TVアニメ化決定ということで、逆に珍しい制服リコ、マキ表紙となりました。他作品のカットもなく、アニメ化を全面に押し出した表紙として非常に印象的です。このイラストはアニメ放映時の芳文社のCMでも使われていました。
・2013年5月号&6月号、アニメ情報解禁に合わせた表紙
5月号のアニメスタッフ、6月号の声優の発表に合わせた表紙となっており、恒例の季節の装いとは趣が異なる表紙でした。
・2013年8月号、アニメ放送開始記念W表紙
表紙と裏表紙でそれぞれ原作とアニメによる同じ構図のイラストが掲載されました。表紙でのコラボは他誌でもよく見かけますが、裏表紙を使ったアニメとのコラボは珍しいですね。ディティールの違いを見つけるのも楽しいです。
・2013年8月号増刊「恋愛ラボ公式ガイドブック」刊行
アニメ放送直前ということで刊行されました。ガイドブックと銘打ってはいますが、内容は初期エピソードの再録+描きおろしという「るりコレ」に近い構成となっています。アニメ関連の記事やトリビュートイラストは本書でしか拝めないのでやはり捨てるに忍びない一冊。他作家によるトリビュートイラスト企画は本書の「応援メッセージイラスト」のほか、2013年9月号の「プチアンソロジー」、同10月号の「恋愛ラボ♡コラボ」、8.5巻のゲスト寄稿にも見られます。
・2014年5月号~、リコ、マキ単独表紙が続く
この号から現在発売中の最新号に至るまで、マキ→リコのローテーションが間断なく続いています。ところでこの表紙、最終回っぽくてちょっとドキッとしました…。
というわけで主な表紙を振り返ってみました。
これらの表紙を拝見することのできるものとして、2013年夏のコミックマーケット84で発売されたイラスト集『恋愛ラボイラストレーションズ』、上でも触れましたアニメ『恋愛ラボ』DVD/Blu-ray第一巻特典冊子「私立藤崎女子中学校生徒会レポート」所収の「まんがタイムスペシャルラフ案集」、そしてファンブックである8.5巻の3点が存在します。ただ、8.5巻はカレンダーで採用されたイラストの再録という体であるためごく一部しか掲載されておらず、「ラフ案集」はその名の通り完成されたイラストではありませんし、表紙イラスト集である『イラストレーションズ』ですら抜けが見られます。ぜひ正式なイラスト集としてまとめていただきたく申し上げたい所存です。
最後に表紙登場人物の一覧と、上記3点の掲載有無をまとめておきます。
まとめる程でもなかった気もしますが、
リコ、マキ:21回、リコ単独:14回、マキ単独:11、5人集合:2
という結果になります。5人集合表紙が初期の2回しかなかったというのはちょっと寂しいですね。モブ的な出演を合わせると7回となるので、「リコ、マキ」+「スズ、エノ、サヨ」という構図が多く見受けられることが分かります。これはアニメイラストにおいてより顕著な傾向なのですが、アニメの話はまたの機会に。
*1:増刊号を除き先々月号でちょうど50冊目
『恋愛ラボ』10巻・加筆修正と雑誌掲載時の比較
『恋愛ラボ』単行本巻末には「~の掲載作品を加筆修正の上、収録いたしました」という文言が付されていますが、実際に雑誌掲載時とはどの程度の違いが見られるのでしょうか。私(以外に)、気にな(っている人がいるのか図)り(かね)ます(が)!
というわけで今回は最新10巻掲載分を見ていこうと思います。画像比較の際は左が掲載誌「まんがタイムスペシャル」から、右が単行本からの引用です。
・・・結論から言いまして宮原先生、月刊連載を2本(時に3本)並行してこなしてたりと何気にかなりの速筆作家だと思うんですけど、その筆の速さは単行本修正にも大変良く表れておりました。
p11 3コマ目:背景の展示品修正
最も多く見受けられるのが、このような背景の描き込みの追加。このコマをはじめ、同様の修正は以降もいくつか見られます。
p15右2コマ目:背景にモブ男子追加
ヤンとナギのやり取りを追うコマなので、正直一読目では気づきませんでした。モブ男子は単行本と、彼らのエピソードが掲載された「まんがタイム」にしか登場しておらず、「タイスペ」の方には一度も出ていないんですよね。単行本読者へのささやかなサービスと言える粋な加筆です。
p15左1コマ目:アンケート用紙に影追加
p19扉絵:ダッキー影追加
p19 2コマ目:視線矢印に白い縁取り追加
p21左1コマ目:「スズ兄の会社~」テロップがコマ中央上部から右下に移動
雑誌の方はあまり『恋愛ラボ』では見ない文字の配置でした。
p22右4コマ目:描き忘れ?スズ眼鏡追加
眼鏡までブッ飛ぶこの衝撃…!的な表現ではなかったようで、単行本ではきっちり着用しています。 デフォルメ顔とはいえ、眼鏡差分スズが拝める貴重な1コマ。
p23右4コマ目&同左4コマ目:書き文字修正
力強く掴まれた様子が伝わる表現に。
p27~:縮尺変更?
この特別編は全体にわたってページの縮尺が上手くできていなかったようで、雑誌掲載時に見きれていた部分が単行本ではきっちり印刷されています。例えばp31下部の「はっぴ~ば~すで~」の描き文字は雑誌だと隠れていたりします。
p29 5コマ目:兄様の独白に吹き出し追加
p33:擬音「パッ」追加
p34 6コマ目:リコ、マキの口元修正
同時に前髪も微修正+手元の輪っかにトーンも入りました。
口が閉じ、手元の謎の線が消えました。汗も追加。このコマにはサヨとスズも描かれていますが、修正が見られるのはこの二人だけです。
p39左4コマ目:ヤンの台詞に改行
p46右3コマ目:生徒会モブ台詞表記変更
「珍し」と漢字表記になり、全体的に描き文字のボリュームが少し抑えられました。生徒会モブ子さんかわいい。
同左1コマ目:ヤンのメール描き文字→活字に
同左2コマ目:リコ、マキの瞳にハイライト追加、スズ目トーン→白抜き
スズ白目多い…。
p48右1コマ目:貼り忘れ?エノ制服トーン追加
同左2,4コマ目:ヤン、ナギトーン変更
呪いの禍々しさが増した気がします。このトーン、『河合荘』でより多用されている印象があるのですがどうなんでしょう。
p57右3,4コマ目、同左1,4コマ目:リコ、ナギにトーン追加
p60右4コマ目:ヤンの台詞微修正
単行本では「日常的に」という枕詞が付き、一層俗っぽさが過ぎる表現に。
p72左4コマ目:ナギ、ヤンの台詞変更
ナギのごまかし方と、それに対応するヤンのツッコミが変わりました。オチが異なる修正は珍しいです。
p75 3コマ目:写真の描き込み追加
この回は雑誌掲載時は全体的に画面が白く、その分トーンなどを施した修正が多く見受けられます。本編と並行しての特別編連載(+『河合荘』)、おつかれさまでした・・・!
p75 5コマ目:リコ母の瞳にハイライト追加
p78:トーン追加
人物背景問わず、それはもう全体的に。
p79 3,4コマ目:ナギ、リコに影トーン追加+増毛
トーンによる影の追加だけでなく、跳ねた髪の毛が微妙に増えています。お話の肝であるナギとリコがバトンを繋ぐ印象的なこのシーンは、雑誌掲載の段階で既に表情や動きが描き込まれていたため、他のコマの白さと対照的でとても際立っていました。
p80 1コマ目:アナウンスの描き文字が活字に
この辺りのシーンでもトーンが増し増し。
p87左2,3コマ目:吹き出しの透過処理がなくなる&影追加
画像は3コマ目。吹き出し内に汗の漫符も追加。台詞が強調され、画面が見やすくなりました。またリコに影が差し、全体的なコマの白さも解消されました。
p100左1コマ目: 時計の影追加
p102:描き下ろし
クッキー作りを終えて帰宅するリコとマキの一幕。マキの「私の作ったモノしか食べたくなくなる魔術のようなレシピ♡」の台詞はこの後の加筆部分で拾われることになります。
p104左4コマ目:ナギの背景の丸トーンにハイライト追加
リコの驚きと喜びの混じった反応を受けてのナギの表情。間違い探しレベルの修正ですが、伝わってくるナギの感情が大きく変わってくる気がします。
p106左3コマ目:ヤンの台詞に怒りの漫符追加
漫符が付くことで呆れの台詞がややコミカルな印象に。普段通りのやり取りだからこそ「久しぶりに話した気がする」というヤンの独白に繋がります。とはいえ、そんな感情をしみじみと噛みしめるヤンの様子が窺える漫符無しの方もそれはそれで。
p108左~p109右:コマの入れ替え&行間コマ加筆
この部分は非常に説明しにくいのですが、雑誌掲載時は一本の4コマで完結していたヤンの謝罪のくだりが、単行本では4コマ2本分に再構成されています。p108左3,4コマ目が雑誌ではそれぞれ1,2コマ目に据えられており、またp109右3,4コマ目が雑誌での3,4コマ目にあたります。前者は加筆修正はなくそのまま、後者は構図や台詞のニュアンスが若干異なっています。
このコマではマキの表情が正面から描かれることとなりました。かわいい。
このほかに特筆すべきはp109右1コマ目。マキの台詞(?)が雑誌掲載時の「・・・」から「――!」に変更されており、ヤンの不器用な謝罪をこの瞬間に察したことがわかります。相手のことを思っての行動が誤解に繋がり、お互いに距離を置く→逡巡を経てコミュニケーションを図ることですれ違いが解消に向かう、という一連の流れは他者との関わり方や人間関係を主題とした(と個人的に思っている)宮原るり作品の肝なので、マキの喉の小骨が一つ取れる重要な場面として、単行本化にあたり丁寧な描写がなされたのかなと思います。ヤンに対して、また読者に対して見せるマキのはにかんだ表情は、誤解が一つ解決に向かうクライマックスシーンをポジティブに演出する、大変素晴らしい加筆修正だと思いました。
p110左~p111:描き下ろし
雑誌掲載時は右側の4コマでエピソードが終了となっていましたが、新たにその後のやり取りとして4コマ3本が追加されました。「魔術はかかってないですよ!?」というマキの台詞は上述のp102加筆ページでのやり取りを受けてのもので、コミカルなロングパスが成立しています。また雑誌掲載時はp110右4コマ目にあったUK王子のメールの末文(「あっこのメールは~」)が同左2コマ目に移動しています。加筆ページにより次巻を待たずしてマキが骨抜きにされてしまいました。アニメで観たいぞ。
…以上が10巻における加筆修正部分でした。2013年9月号掲載分以外は全ての話数で何らかの変更点が見受けられ、単行本化に際し非常に多くの部分に手を加えられていたことが分かります。探せばさらに細かな違いが見つかるかもしれませんが、大きな変更点は全て拾えたのではないでしょうか。
まとめると、背景の書き込みや人物のトーン、ハイライトの追加といった修正が主ではあるが、人物に関しては表情などの作画修正はほとんど行われない(=雑誌掲載の段階で既に丁寧に描かれている)、重要な心理描写がなされる場面においては作画だけでなく構成や台詞にも手が加えられることもある、台詞の改行や描き文字/活字の変更、心理描写用トーン(?)の変更など画面のバランスを意識した修正も見受けられる…といったところでしょうか。そしてお分かりの通り、表情ややり取りに加筆が入るのはリコ、マキ、ナギ、ヤンの4人。モブ男子が言うところの「俺達と明らかに線数違う」人たちです。今巻のエピソードの中心となったのがこの4人だったから、といえばそうかもしれませんが、やはり主役の二人+関係の深い二人の間に発生する感情・心情の機微の表現するにあたり、より細やかな描写が求められた結果なのだと結論付けたい次第です。サヨなんて修正箇所0ですからね…!
ということで以上が『恋愛ラボ』における「加筆修正の上、収録」の正体でした。該当する「タイスペ」が手元に無いので9巻以前の差異は把握していないのですが、加筆修正の傾向として上で見たものと大きく外れてはいないと思われます。いつか『河合荘』も把握したいところですが、「アワーズ」は保存していないのでどうしたものか…。
- 作者: 芳文社
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2014/09/22
- メディア: 雑誌
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